第357話 霙のスキル
「……そうそう、
雹菜がコーヒーを淹れながら俺に尋ねる。
慎と美佳がギルドビルを後にして、会議室に残ってるのは俺と雹菜と静さんだけだ。
一応、下には受付の職員がいるけど、俺はいまだに彼女たちの名前を知らない。
何というか、他人行儀感がすごいというか……まぁ俺って彼女らからすれば、唐突に現れた謎のギルドメンバーだからな……仕方ない。いずれもう少し交流を持とう。いや、普通に挨拶くらいはしてくれるのだけどね。
ちなみに、雹菜が尋ねたのは、迷宮の中で話せなかった、霙の変化のことだ。
一見、ステータスだけ見れば何も変わっていないように思える霙のスキル周り。
もちろん、能力値自体は変化しているのだろうが、本来の想定では、レベルが区切りのいい数値に達するにつれ、何かしらスキルも増えるのではないかということだった。
それにも関わらず、スキルは全部変わっていないのはおかしいのでは、と言う疑問だな。
ただ、これについて、俺の方には明確な答えがあった。
俺は雹菜に答える。
「あぁ、それなんだけどさ。実は、俺の方の表示が増えてるんだよ」
そう言って、《ステータスプレート》を見せる。
名前:天沢 創
年齢:18
称号:《スキルゼロ》《冒険者見習い》《地球最初のオリジン》《総理(日本)の救出者》《アイドルのマネージャー》《異邦人》《真竜の主》……
職業:
腕力:152
魔力:245
耐久力:230
敏捷:215
器用:8110
精神力:8680
保有スキル:無し
保有アーツ:《天沢流魔術》《天沢流剣術》《マグスガルド陣術》《天沢流従魔術》
「……変わってなくない?」
サラリと見て、雹菜がそう呟く。
静さんも同じような感情をその顔に浮かべていたが、俺は説明する。
「ここだけだとそう見えるだろうが……ほら」
そう言って俺は《ステータスプレート》の項目をタッチしたりスワイプしたりしていく。
《ステータスプレート》はスマホの如く、表示項目をそのようにして選んだりできるからな。
じゃなければ、膨大な量の情報をこんな板一枚で表示し切れるわけがない。
そういうわけで、俺がいじったのは《天沢流従魔術》の項目だった。
そこをタッチすると、
《保有従魔》の欄が表示され、そこに*****《霙》という表示がある。
さらにその表示をタップすると、霙のステータスが表示されるのだが、スキル欄を見てみると、《+》の記号が一番端っこに存在し、さらにその部分をタップすると……。
「……えっ、何これ。膨大な数のスキルが表示されてるけど……あぁ、これは見たことないやつだわ。これも聞いたことが……こっちは知ってるわね」
雹菜がそう呟いた。
同様に見ていた静さんも、
「これは……すごいですね。ですけどまさか全部のスキルを霙ちゃんは覚えたと言うわけではないのでしょう?」
と鋭いことを言う。
「わかるか?」
「それは当然です。レベル10になったとはいえ……少し強い魔物を倒したくらいのことで、これほどのスキルを覚えられるわけがないですから……。竜とか従魔はそもそも人間の冒険者とはルールが違うんだ、と言われたら何とも言えないですが、今までのルールから推測するとそういう風に考えたほうが納得が行きますので」
「まぁ、そうだな……そもそも霙の成長の仕方は俺らとは違うように見えるし、ルールが違う部分もあるんだろうが、理不尽に異なってるってわけじゃなさそうだし。どう違うか、もしくは同じなのかはまだわからないけど。ともあれ、このたくさんのスキルなんだけどさ、さらにどれか一つをタップしてみると……」
スキル《咆哮》を覚えますか? スキルポイント1を消費しますがよろしいですか?
《ステータスプレート》上に、そう表示されたのだった。
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