第352話 相談

「なぁ、二人とも……」


 そして俺は、たった今見えた内容……つまりはみぞれのステータスについて、二人に話した。

 それを聞いた二人は頷いて言った。


「やっぱり、生まれたばかりにしては高すぎるわね……レベルがそれ相応に上がってるから? いえ、それにしたって、最初から腕力的なものは強かったし……というか、レベルが10に上がってるけど、スキルに変化がない?」


「いや……一見そう見えるけど、実はそうじゃない。それは……ちょっと長くなりそうな気がするから、後にしよう」


「そう? 分かったわ。静は何か思うところない?」


「ステータスについてはレベル上昇で上がってる、という部分もあるのかもしれませんが、元々最初から高かった、と考えるべきでしょうね。上がり幅については、もう一つレベルを上げれば分かるでしょう。ただ今日のところはこの辺りで終わらせておいた方がいいかもしれませんね……スキルについての説明も落ち着いたところでの方がいいでしょうし、そもそも霙ちゃんもお疲れみたいですし」


 静さんがそう言って霙を見る。

 見れば、霙はだいぶ元気そうに見えるが、それでも入ったばかりの頃と比べると少し動きが精彩を欠いているように見えた。

 雹菜の肩の上に乗っているが、目もとろんとして眠そうである。

 俺が雹菜に近づいて霙の頭を撫でながら、


「……疲れたか?」


 と尋ねると、霙は、


「……キュッ……」


 と答える。

 これはまさにそうだ、と言いたいのだろうということが分かった。


「これは帰った方がいいな」


「ええ」


「そうしましょう」


 二人がそう返事をすると、コロシアム周囲に張られていた膜が徐々に透明化し、端の方からキラキラとしたものに変わって消えていった。

 俺たちがしっかりと生存していることを確認したからか、観客席にいた冒険者たちが、


「生きて帰ったか!」「ナイスファイト!」


 などと歓声を上げていた。

 別に中の様子など見えなかっただろうに、気のいい人たちだ、と深く思ったのだった。


 *****


 それから五反田のギルドビルに戻り、素材などを素材管理部に納めていく。

 大抵の素材はそのまま冒険者協会行きだが、中にはうちに直接依頼が来ているものもあり、そういうところにはすぐに連絡して送付するか、もしくは直接取りに来てもらう段取りをつけてもらう。

 やっぱり、協会を通さない取引の方が儲けはいいのだが、大量に集まりすぎる品などになってくると、協会に代行してもらった方が面倒がない。

 それでも本当は直接取引の方が儲かりはするのだが、手間がかからないことの方を重視しているのだな。

 うちはまだまだ少数精鋭でやってるギルドなので、その方がいいのだ。

 《黒鷹》のような大規模ギルドになってくると、資材管理なんかについてもかなり組織化されていて、物品の納品システムも完成されてるから問題ないんだろうけど、うちはそこまでではない。

 中小の悲しさというかなんというか。

 まぁこれから上がっていくのだからいいのだが。

 それに、うちはこの規模のギルドにしては資金力はかなり潤沢だ。

 だから損して得取れではないが、それで確保できる時間を大事にするのだ……。


「ってことだから、この《従魔の卵》は売却しないで、うちのギルドの誰かが使う方針で行こうと思ってるんだけど、いいかしら?」


 今日、ギルドにいる人間を呼んで会議室で雹菜がそう言った。

 と言っても、いるのは俺と雹菜、静さんに慎と美佳くらいだが。

 他のみんなはまだ迷宮に潜っているな。

 連絡も取れないし、とりあえずの相談というわけだ。


「俺はそれでいいぞ」


「私もです」


 と俺と静さんが言ってから、慎と美佳に視線を向けると二人は驚いた顔をしていた。


「……いや、いきなり呼び出したかと思えば、《従魔の卵》を手に入れたって……お前ら、またやらかしてるよな……」


 まず呆れたような表情で慎がつぶやく。

 続けて美佳も、


「しかもそれ、《伯魔の卵》なのよね……上から、多分三番目か四番目にすごいやつ? でも今まで見つかってるのは下から数えた方が早いやつばかりだから……売れば何億何十億って……」


 そんなことを言った。

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