第351話 レベル10

「……魔石をバリバリ食べてるよ……あれ腹壊さないのか?」


 みぞれの食いっぷりを見ながら俺がそう呟くと、雹菜はくなが言う。


「流石に何が体に良くて何が体に悪いかくらいはわかってるんじゃない? 動物ってそういうものだし……魔物だけど……」


 続けて、静さんは、


「魔石はともかく、岩石を食べる魔物は確認されていますから、似たようなものだと思えば平気なのでは?」


 と言った。


「岩石を食べるって……」


「主に、体表が岩石の鱗で覆われてたりするような魔物ですね。ロックリザードとか、アイアンマウスとか」


「食べて、鉱石成分を補ってる?」


「おそらくは。アイアンマウスは質のいい鉄鉱石を好んで良く食べるそうですよ。懐かせられてはいないようですが、人工的に飼育して色々食べさせてみてわかったことだそうです」


「うーん、魔物といえど、生き物ってことか……通常の地球の生物と比べるとその生態は大幅に違うっぽいけど」


「それは魔力持つ生き物ですからね。まぁ、今となっては人間もそういう意味では魔物ですか」


「えっ」


「魔力持つ動物を魔物、と定義するならそうなるでしょう。通常の動物にも魔力を操ることが出来るものが生まれることはご存知でしょう? それもまた魔物でしょうし……」


「一応、学説的には通常の生物は魔物から除外されるってのが通説だったのでは……」


「私はその説にはかなり疑問を持っています。なぜ除外する必要があるのか分かりませんから。魔力を持ってる生物はみんな魔物、と考えた方が色々スッキリすると思うんですけどね……ただ、単なる言葉遊びみたいなものだと考えれば別にどっちでもいいという話になりますけど、魔物、という言葉はそれこそステータスの説明文にも出てきますからね。なんらかの定義はあるはずです」


「あぁ、少なくとも地球人が勝手に決めてる内容じゃないのか……」


「そうです。まぁいずれこの辺りはもっとしっかり整理されるでしょうね。今は迷宮や魔物関係に関する学問は激動のようですから。高校で教えられる内容も一年後には大きく変わってるでしょう」


「俺が覚えたようなことは時代遅れになるんですね……」


「いつの時代も、どんな学問も、そんな風に発展してきたのです。今更でしょう。さて、そろそろ霙ちゃんが食べ終わりそうですね」


「随分と美味しそうに食べてたわよ? 味があるのかしら……」


 雹菜がそう言ったのは、さっきからずっと霙の様子を観察しているからだ。

 単純に可愛いというのもあるけれど、それ以上にギルドリーダーとして、従魔の情報はしっかりと取っておきたいらしい。

 

「味ねぇ……魔石にそんなもんあるのかな。というか、魔石って人間が食ったらどうなるんだろ」


「まず噛み砕けないと思うけど……」


「腕力とか耐久力の数値が高ければいけそうじゃないか?」


「噛む力と歯の耐久力でゴリ押しできるから? バカみたいな話……だけど、確かにそれなりに高ければいけなくはなさそうね……実験してみた方がいいのかしら?」


「すでに誰かやってそうな気もするけどな……おっ?」


 霙が魔石の最後の一欠片を飲み込むと、その瞬間、霙の周囲を光り輝くオーラが覆う。

 それは、霙が戦闘時に出す闇色のそれとは違って、白に近いものだった。

 そして、俺の頭の中に情報が焼き付けられるような感覚がし……。


 名称:*****《霙》

 種族:竜(無)《幼体》

 レベル:10/100

 腕力:75

 魔力:95

 耐久力:102

 敏捷:124

 器用:62

 精神力:37

 種族固有スキル:《滅尽吐息》《下級属性吐息》

 一般スキル:《下級無術》《下級氷術》《下級爪術》《下級牙術》《下級木術》


 そんな情報が、見えたのだった。

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