第346話 作戦会議

「……挑む人少ないって割には、結構人がいるな」


 俺たちは、第五層のボスに挑むため、ボスエリアへとやってきた。

 そこは、小さなコロシアムのような建物のようだが、天井部分は開いているタイプだ。

 そして、コロシアムには観客席が設けられていて、そこに腰掛けている冒険者たちの姿が見える。

 正直、あまりみぞれが戦っている姿を見られたくないので、邪魔だと思ってしまうが……。


「あの観客席は安全地帯なのよ。だから、五層でちょっと疲れたらあそこで休む人多いみたい」


「へぇ……変わった安全地帯もあったもんだな。ただ、ここがボスエリアってことは、コロシアムの中心で戦うってことだろ? 霙の戦いぶり、見物されてしまうんじゃあ……」


 俺が懸念を口にすると、雹菜はくなは首を横に振って言う。


「それについては安心して。コロシアムに入って、誰かがボスと戦闘状態になると、観客席からは見えなくなるのよ。中の様子が見えない、半球状の壁というか膜みたいなものが張られるの。で、戦いが終わると、それが取り払われるのよ」


「また随分と変わった仕組みだな……というか観客席の意味なくないか、それ」


「私に言われても。迷宮のおかしさは今に始まったことじゃないじゃない」


「そりゃそうか……」


「一説によると、あの観客席が安全地帯に設定されているために、あそこにいる者を保護するため、そのような膜が張られるのではないか、ということらしいですよ。迷宮の設計ミスというか、バグというか、そういうものではないかと」


 静さんがそう言った。


「確かにそりゃ設計ミスだな……その膜がなければ、観客席に流れ弾とか飛んでくるから、それを避けるとなるとそうするしかなかったと……」


「本当かどうかは分かりませんけどね。でも、さまざまな迷宮でそういう、下手な設計みたいなエリアは確認されていますから。ここもそのようなものだと考えるのは論理的ではあります」


「迷宮の仕組みが完全に理解できる日は来るのかねぇ……」


「来るとしても、遥か遠い日になるかと……あぁ、そういえばここに出現するボスのことですが……」


「そうね、作戦を立てておいた方がいいわね。霙が戦うんだけど、指示出すのは創なわけだし」


「そうしてもらえると有難い……で、何が出るんだ?」


「ここのボスは、リザードマンよ」


「え? それは……」


 弱くないか?

 と思ったがすぐに雹菜は説明する。


「もちろん、ただのリザードマンじゃないわ。普通のそれよりも倍近い体高を有するもので、鱗の色も深い緑色でね。フォレストリザードマンの変異種、と鑑定では出るらしいわ。ね?」


 静さんに雹菜が尋ねると、彼女は頷いて言った。


「えぇ。と言っても私は直接見たことはないですが、知人の鑑定士によればそのようです。通常のフォレストリザードマンはおよそ二メートルくらいですから、四メートルほどあり、またスキルも強力なものが多いとか。《木術》も使用してくる点は、通常のフォレストリザードマンと変わりませんが、その威力は一段上だそうです。でも……その辺りは霙ちゃんならなんとか出来るでしょうね」


「まぁ、属性吐息で燃やせばいいのかな……他には」


「リザードマン系は武術を身につけていることが多いですが、その例に漏れず大剣を持っているそうです。剣術系スキルも持っているようですが、これは毎回同じというわけではないとか。相対してみないと判断しにくいところですね。あとは……大きな体躯をしている割に素早いのでそこも気をつけるべき、と」

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