第344話 リンク
「……化け物感がないって言うけど、他の数値も相当なものよ? C級上位か、B級に足を踏み入れているわね……数字だけ見るなら、だけど」
「とは言っても、雹菜よりは低いだろ?」
「私はB級上位……か、A級下位と言えるくらいにはなってるからね。ただ、ここからは難しいわね。今、世界では冒険者たちの平均ステータスが上昇してるから。《転職の塔》での転職が盛んだし、それに伴ってスキルやステータスも上がってる。加えて、迷宮も多様になってきてて、出現する魔物の質にも変化が出てきてるから……なんというか、適正ステータスで挑みやすくなってるのよね」
「へぇ……俺がいない間にそんなことに……」
「ここ三十年、大きな変化がなかった冒険者業界が、大幅に変わってきてるのよ。それだけに、魔境奪還の可能性も口にされ始めてて、だからこそ、北海道魔境調査も進めようとしてるんだと思うわ。世界で最初に魔境を奪還できた、なんて実績があれば、日本に強力な冒険者が集まりやすくなるだろうしね」
「なるほどなぁ……」
「世間話はそれくらいにして、創さんのステータスですよ。アーツに新しく現れている《天沢流従魔術》というは……」
静さんが話を戻したので、俺はステータスを確認してから、言う。
《天沢流従魔術》をタップしてみると、その説明が出る。
天沢流従魔術:《神魔の卵》を孵化させ、従えることの出来る、天沢創特有の従魔術。従魔のレベルや、本人の技量のが上昇するにつれ、従魔とのリンクが強くなる。
「……リンク?」
首を傾げる俺に、静さんが言う。
「それは、通常の従魔術でも近い概念があるものですね……絆、とか、繋がりとか、そういう言い方をするようですが……」
「どんなものなの?」
雹菜が尋ねると、静さんは言う…
「それが強くなると、従魔の状態を理解したり、また言うことを聞かせられる幅が広がる、というもののようです。それ以上のことは……従魔を持つ者が少ないものですから……」
「なるほどね……でも、それだけでもいい情報だわ。創もリンクが強くなれば、
「あー、それこそ精神力の数値とかそういうのが今後見られるようになるかも、ってことか。それが可能になったらありがたいな。どんな相手と戦ったら適正なのかとか、考えやすくなるし」
「今でも大雑把には分かるけど、見た目で判断しちゃうところもあるからね……まさかこの子と巨大な体躯の魔物を相対させても大丈夫!みたいな気にはならないわ……」
「実際にはオーク相手でも何の問題もなく屠ってましたけどね……ただ、どこまでいけるかについて、チキンレースじみるのは確かです。やはり、そのリンクを強くしていくのは大事でしょう」
「レベルも関係してるっぽいから、やっぱり上げていくのがいいだろうな……次は10か。もう少し頑張ればそこまでいける……か?」
「この階層だと流石に上がりにくくなってきてるから、もう少し深く潜った方がいいわね……」
「まだ潜るのか……五階層くらい?」
「もう七階層くらいまで一気に行ってもいいような気がするけど……」
「いやいや、そこまでなると、ここじゃC級上位くらいのがパーティー組んでくような階層になるだろ……」
「霙なら大丈夫だと思うけど……でも、もしものこともあるしね。五階層で満足しておきましょう」
「あぁ」
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