第337話 他のスキル
「他に持ってるスキルは、種族固有スキルとして、《下級属性吐息》に、一般スキルとして《下級無術》《下級氷術》《下級爪術》《下級牙術》なのね…… 属性吐息や氷術は分かるけど、他のものはあまり聞いたことがないわね」
一通りのスキルを全て伝えると、
「そうなのか? でもまぁ、爪術と牙術は、そのまま、爪や牙を武器として戦うってことだろ。人間でも使える人がいそうだけどな」
「今は職業が大量にあるからね。全ての検証が終わってないのよ。スキルもそう……でも、獣戦士系の職業にはそういうものがあるとは聞いた覚えも……ただ実際に目にしたことは、ないわ」
「そうか……」
「私はありますよ」
静さんがそう言った。
「本当ですか?」
「ええ、スキルの鑑定依頼も《無色の団》所属前に結構受けましたからね。予想された通り、牙や爪を武器として戦うスキルで間違いありません。ただ、職業がない時代だったので、かなり珍しいものでしたが……元々、猟師などをやっている方に発現しやすいスキルだったかと」
スキルは、その人の生き方や行動によって発現すると言われている。
だから俺もかつては色々とやってみた。
全部無駄だった訳だが……ともあれ、猟師に発現しやすい、か。
動物的なスキルだからか?
まさか熊や鹿相手に自らの牙や爪で戦う訳でもないだろうし。
普通は猟銃だろう。
「強いスキルなのか?」
「通常の剣術や槍術と同じで、級によりますね。そして当たり前ですが、基本ステータスが高ければ高いほど強力になりますが……霙ちゃんの場合にはステータスが見えないので、どのくらい強力かは……」
「あぁ、その問題もあったな……なんで見えないんだろう」
「やっぱり、主人にだけいずれ開示されるのではないでしょうか。スキルもそういうことのようでしたし」
「今は俺にも見えないんだけどな……レベルとかが条件か? まぁ上げていけば分かるか」
「今のところはそうするしかないでしょうね」
「じゃ、次の魔物探しと行くか……」
「あ、それならあっちからノーマルゴブリンが近づいてきてるわよ」
目ざとく見つけた雹菜がそう言ったので、
「よし、行こう」
俺たちは連れ立ってそちらに向かったのだった。
*****
「ギャガァッ!!」
ボツボツとした緑色の肌を持つ子供のような身長のその魔物が、叫び声を上げながら向かってくる。
その速度は人間の子供にはまるで出せないような速度で走ってくるが、俺たちにはもちろん、しっかりと捕捉できていた。
手には棍棒を持っているが、あれによる一撃を受ければ、普通の大人であれば昏倒し、場合によっては死ぬ。
それだけの脅威を魔物の中でも最下級と言われる魔物でも持っているのだった。
だからこそ、俺たち冒険者はあれらを駆除していかなければならないのだ。
とはいえ、今回それをやるのは俺たちではないのだが。
「霙! 《下級爪術》!」
霙に対して、指示すると霙の目に力が入り、それからその爪に闇色のオーラが纏われる。
あれは、魔力で良さそうだ。
スキルによって強化されているのだろう。
そして、霙はゴブリンに向かって飛びかかり、その爪で引っ掻くように攻撃をした。
「……キュアァ!」
体型が割と丸っこいので、リーチが短そうに見えたが、攻撃の瞬間、その爪がオーラによって延長される。
ゴブリンの頭に爪が食い込み、そこから地面まで垂直に下ろされた。
何の抵抗もなくスッと通るような一撃で、ゴブリンは一瞬困惑したような表情をした。
しかし、すぐにゴブリンの体はぱかり、と体の中心線から分たれて、左右に倒れていった。
「……うん。ゴブリン程度じゃ、相手にもならないな、これは……」
「キュッ?」
こっちに近寄ってきて首を傾げる霙に、俺はそう言うしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます