第336話 結果
「……跡形もないわね」
あまりの結果にある種、呆れているのだろう。
「物騒過ぎるだろ……それにスライムだけじゃなくて、あのブレスが命中した部分の地面も抉れてるし……」
「そうね。地面はただの土とは言え、土が吹き飛ばされているとか圧縮して固められてるとか、そういうわけじゃなく、本当に
「どうやら、周囲の魔力も消えているようですよ。物質だけではなく、不可視のエネルギーですら消滅させてしまうものなのかもしれません。だとすると、まず防御不可能な攻撃ということになるかも……」
静さんがその目で確認してそう言った。
万物鑑定士の能力を使ってのことだ。
間違いはないと思っていいだろう。
「防御不可能か……強力で、いいスキルと言えるんだろうが……やっぱりおいそれとは使えないな」
人に向けて使って存在丸ごと消滅ではまずいだろう。
証拠隠滅の必要がないと考えるとこの世で最も暗殺に適したスキルと言えるかもしれないが、それにしては目立ち過ぎる。
そもそも霙にそんなことやらせるつもりはないのだ。
「でも、レベル上げしないと……他に使えるスキルはないの? あと一応、最下級とはいえ魔物を倒したのよね。レベル、上がってないの?」
雹菜に尋ねられ、そういえば、と俺は霙のことを意識する。
すると先ほどと同様に、頭の中に霙のステータスが浮かんだ。
名称:*****《霙》
種族:竜(無)《幼体》
レベル:2/100
種族固有スキル:《滅尽吐息》《下級属性吐息》
一般スキル:《下級無術》《下級氷術》《下級爪術》《下級牙術》
「……お? おぉ! 上がってる! 上がってるぞ!」
確認してみると、霙のレベルがひとつ上がっていた。
あんなに弱い魔物でいいのか?
と思わないでもないが、レベル1から2への上昇とか、ゲームなんかでも容易に上がるものだと考えればおかしくはないと思う。
さらに、新しい、スキルも増えている。
《下級属性吐息》?
これは聞いたことのないスキルだな。
まぁ、名前からして想像はつくが……。
とりあえず、霙の変化を二人に説明する。
「あと、新しいスキルが増えてた。《下級属性吐息》だってさ。種族固有スキルらしいけど……」
「属性吐息……まぁ、ブレスの類は、《転職の塔》のレッサードラゴンも使えたから、おかしくはないわね。亜竜系というか、リザードマンみたいなのも上位のものは使ってくるし」
「ってことは、これは竜系が使える基本的なスキル見たいな感じか。レベルが上がったから、覚えたのか……」
「たったのレベル2で覚えていいスキルじゃないくらいに強力なんだけど……いえ、でもレッサーとかじゃない、真の竜なんですものね。そういうものかもしれないわ。そもそも最初からさっきのやつを覚えてたわけだし」
「そういや、あっちとは別みたいだな」
名称を口にしてしまうとまた霙が放ってしまうかもしれないため、俺はそれについて口にできなくなってしまった。
練習すれば口にしても吐かせないで済むのかもしれないが、どう指示が伝わるのか今はまだ検証できてないため、注意しておきたい。
「属性吐息、と言われると地水火風の分かりやすいものが使えそうよね。さっきのはそういうのとはそもそも根本的に違うような気がしたわ。まるで……破壊とか消滅とかそういう概念そのもののような」
「そうなのか? 俺にはよく……」
「いえ、私もなんとなくだけどね」
「それについては私も感じました」
俺以外の二人にはそう感じられたらしい。
高位冒険者や、万物鑑定士の勘というものだろうか?
そういう意味では俺は鈍感に過ぎるからな……。
魔力の気配とかには敏感だが……。
「まぁ、でもそういうことなら、戦わせやすくなったかな。さっきのやつじゃなく、属性吐息の方で霙には頑張って貰えばいい。やれるか、霙」
そう尋ねると、霙は、
「キュッ! キュッ!」
と胸を張って鳴いたのだった。
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