第335話 繋がり
「さて、この辺りまで来ればいいかしら。第二階層までの通路からはだいぶ離れてるし、特殊な魔物とか素材があるわけでもない場所だから、誰も来ないでしょう」
雹菜がそう言って足を止めた。
今回の俺たちの目的は、何よりも
そのためには、なるべく人目につかない場所で魔物と戦ってもらう必要があった。
まぁ、霙の姿自体は隠しようがないので、街で堂々と連れ歩いているが、戦う姿とかは秘密にしておきたい。
何をするのか、出来るのか、今のところさっぱりわからないからな……。
安全性などを確認出来れば、人通りの多いところでも別に戦ってもらって構わないのだが、今のところはなんとも言えない。
あとちょっとだけ心配なのは、誘拐の危険だな。
言うまでも無くなく従魔というのは貴重な存在なので、誘拐されることもあるという。
その目的は様々で単純に自らの従魔として従えるため、からペット目的とかコレクション目的まで多岐に亘る。
通常の従魔ですらそんななのだから、竜の従魔なら余計にその心配があるが、幸い、日本は他の国と比べると平和だ。
そもそも街中でどんぱちやったらすぐに軍やら高位冒険者やらが飛んでくるからな。
外国はその辺りの意識というか、罪悪感みたいなものが希薄で、力のある冒険者がやりたい放題にしているところも少なくない。
日本に生まれてよかったって感じだな……それでも注意はしなければならないけれど。
「しかし、本当に戦えるのかね……霙、今から魔物と戦ってもらうけど、平気か? 無理そうなら、すぐに加勢するけど……」
と尋ねてみると、わかってるのかわかっていないのか、首を傾げて、
「キュ?」
と鳴く霙だった。
「大丈夫かな……」
「まぁ、やらせてみるしかないでしょう。いくら霙が可愛いからって、基本的には魔物よ。本能に戦いが組み込まれているはず……」
「……そうかな? その辺りの本能抜け落ちてそうな顔に見えるけど……」
「その時はレベル上げの方法、ちょっと考えてみないといけないかもね……ともあれ、来るわよ。あれは……スライムね。まぁちょうどいいでしょう。怪我もしないだろうし」
雹菜が視線を向けている場所を見ると、そこには小さめのスライムがいた。
透明な体の色を見るに、ノーマルスライムだな。
食事もできていないのか、内部には死骸などない綺麗な色をしていた。
「少し弱ってるかな? 最初の相手にはいいか……」
「体力もあまり残っていないようですね。攻撃を積極的に行えるだけの力もなさそうです」
静さんがその能力を使ってステータスを見たらしい。
それなら、と思った俺は霙に言う。
「よし、霙。やるぞ……分かるか? あのスライムを倒すんだ。方法はなんでもいい。出来るか……ッ!?」
霙に指示するように尋ねると、その瞬間、頭の中にビリッ、と軽い電流が走ったような感覚がした。
そして……。
「なんだ、コレ……」
頭の中に、霙の情報が無理やり入れ込まれるような、そんな感じがする。
霙に一体何が出来るのか、それが分かる。
名称:*****《霙》
種族:竜|(無)《幼体》
レベル:1/100
種族固有スキル:《滅尽吐息》
一般スキル:《下級無術》《下級氷術》《下級爪術》《下級牙術》
「どうしたの、創」
雹菜が尋ねてきたので、俺は答える。
「あぁ……いや、なんでか分からないけど、霙の出来ることが分かるんだ。スキルとかが……」
「え、ほんと? というかスキル持ってるのね。静は見える?」
「いいえ、レベルや種族は見えますが、スキルは見えません」
「そうなのね……どうしてかしら。主だけに開示される?」
「そうなのかもしれません……創さん、スキルがあるのでしたら、指示して使わせてみては?」
「いや……まぁそうなんだけどさ。なんだか物騒なスキルが目に入って……これ、使わせても大丈夫なのかな……?」
「物騒?」
「あぁ、《滅尽吐息》とかいう……あっ」
口にすると、霙の目に光が宿った。
そして何か強力な力が霙の口元に集中するのを感じる。
それから、
──ピュン!
という感じで、霙の口の中からどこか冷たい色をした線のようなものが吐き出された。
それは目にも止まらぬ速さでスライムに命中し、そして……。
──ジュッ!!!
という音だけを残して、その場から完全に消滅させてしまったのだった。
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