第332話 レベル上げ
「人間のレベルねぇ……。だけどステータスはなんというかこう、レベルアップ!みたいな感じで上がるわけじゃないじゃない。そこのところはどうなの?」
雹菜が疑問を口にする。
確かにそれはその通りだった。
特に、能力値の上昇をこの中の誰よりも感じてきた彼女である。
その実感には説得力があった。
これに静さんは、
「それは……なんとも。ですが、従魔には事実としてレベルがある。ということは、人間にあってもおかしくは……」
「ないわね。それはその通り……でも今は見ようとしても見えない……うーん、これは棚上げね」
男らしくスパッとそう言い切った雹菜であった。
いや、全く男ではないのだが、思い切りがいいんだよな。
そうでなければギルドリーダーなんてしていられないか。
「レベルのことを知るためには、従魔のレベルがどうやって上がるのか調べるのがいいんじゃないか?」
俺が思いつきでそう言ってみると、静さんも雹菜も頷く。
「そうですね。能力値の上昇と連動しているのであれば、やっぱり魔物を倒せば上がる、と考えるべきと思います」
「私も同感ね……でも、この子、戦えるのかしら?」
雹菜はそう言って視線を子竜に向ける。
確かに種族としては間違いなく《竜》としか言いようがない存在である。
しかもかなり強力な《竜》であるらしい、真なる竜、と説明にあったくらいだ。
戦えるはずだと考えたい。
けれど、ずんぐりむっくりとした体型や、下に降ろした時の、ぽよぽよと効果音が聞こえてきそうな鈍い動きを見ていると、戦えるとはとてもではないが思えなかった。
しかし、そんな視線を俺たちが向けていたからか、
「……キュッ! キュキュー!!」
少し憤慨した様子で地団駄を踏みながら、俺たちに向かってそう鳴いた。
「……もしかして戦えるって言いたいのか?」
「そうみたいね……まぁ戦えるのなら検証も容易でしょうけど。レベル1って書いてあったし、普通、そこまで低いとすぐに上がるわよね?」
「……時と場合によるんじゃないか? 強力な存在はレベルが上がりにくい、みたいなのよくあるだろ。曲がりなりにも竜だぞ、こいつは……」
「うーん、そう言われると……でも実際に試してみるしかないわ。今のところ、《転職の塔》攻略の日程が定まるまで手持ち無沙汰だし、お試しにどこかの迷宮にでも潜りましょうか?」
「こいつとか?」
「ええ。流石にみんなでゾロゾロってわけにもいかないでしょうけど、私と創、それに静の三人だけでいくならさっと行って帰って来られるでしょ」
この三人なのは、戦力担当と、従魔の主人と、そして鑑定士という最低限の人員ということだな。
俺も鑑定できるようにならないか、と色々試しているが、これは模倣がかなり難しい魔力の動きをしている。
上位鑑定も見てみたが、あっちは目にものすごく細かい紋章が出ていて、俺の操作力だとまだ無理だ。
下位鑑定とかならいけるのかもしれないが、これは見る機会がなくてなぁ……。
今まで一度も見たことがないわけではないが、流石に魔力の動きは覚えていない。
一回、実際に見ながら真似ないとどうにもならない。
だから静さんも必要なのだった。
「じゃあ、そうするか。早速行くか? いや、流石に今日はアレだけど。明日?」
「そうね、そうしましょう。静、スケジュールは……」
「問題なく」
「と、いうことみたいだから……他のみんなは通常業務かな。でも《転職の塔》攻略で誰を連れてくかまだ決めかねてるから、あんまり過密にならない程度にね」
雹菜の声に、全員が、緩く返事をし、その日はお開きになったのだった。
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