第330話 レベル

「それについては、ギルドに戻って色々検証する感じになりました」


 静さんがそう言うと、雹菜は、


「……分かったわ」


 と頷いた。

 なぜそうなったのかについてはツーカーというか、ここが他所のギルドだからということですぐに理解したのだろう。

 しかし賀東さんからしてみればちょっと何か言いたくなる部分でもあったようで、彼は言う。


「おいおい、せっかくここまで聞いたんだ。もう少し俺にも聞かせてくれてもいいじゃねぇか。機密の心配なら本当に契約術使い呼んで正式な契約結ぶぜ? 契約関係の術は、ランクが高くても容易には逆らえないことは知ってるだろう」


 契約術、というのは特定の契約を守らなければペナルティがかかる、という特殊な術のことで、使用できる者は非常に少ない。

 術自体が特殊だからか、あまり戦闘力の高い者がおらず、主に冒険者同士、特に高位冒険者同士の契約に立ち会う事が多いと言われる。

 下っ端にはあまり縁のない人々だ。

 そしてこの契約術の特殊なところは、賀東さんが言ったように、ランクの高い冒険者であっても容易に契約を破ることが出来ないことだろう。

 これは、契約術というものが、そもそも契約する者同士の合意によって結ばれるため、高位冒険者たちの力も流用して術が完成するからだ、と言われている。

 実際、契約術を結ぶ時には、契約を結ぶ者も魔力などを吸収されているのを感じるらしい。

 そういうものであるために、信用性は非常に高い。

 ただ、かかる金もかなりのものになるらしいが……。

 簡単な約束とかに使うようなものではないな。

 だからなのか、雹菜は言った。


「別にそこまでする必要はないわよ。それに、機密だけ心配だからってことでもないわ。一旦戻って調べないと詳しいことは私たちにも分からないってだけで……そうでしょ、静」


「その通りです。ここで調べてこの倉庫の魔導具全て吹っ飛ばしても不問にしてもらえるのならば話は別ですが……」


「お、おいおい、冗談はやめろよ……その顔は冗談じゃなさそうだな……わかったわかった、この場は引いておくよ。だが何か分かったら教えてくれるってことでいいのか?」


「ここまで踏み込まれたらもう仕方ないからね。契約術結ぶかどうかは……まぁ、後で考えましょう」


「そうか。まぁそれはそれでいいか。で、その竜についてなんだが……」


「気になることがまだあるの?」


「なくなると思うのか? 挙げたらキリがねぇぜ。だが、差し当たって気になるのは、レベルだよ。さっき、レベル 1/100ってのがあったろ。どういうことだ?」


「レベルはレベルじゃないの? RPGで上げるような……」


「それくらいはわかるっての。だが、従魔にそんなもの確認されたことが今のところないんだよ。万物鑑定士であるあんたにだけ見えるのか?」


 静さんに視線を向けて尋ねる賀東さん。

 これに静さんは答える。


「……私だけではないですね。ですが、これを確認するには、従魔士系の職業についている必要があるようなので……その上で鑑定持ちというのは今のところほぼいないでしょう?」


「職業か……確かにただの従魔士系なら何人かいるが、鑑定持ちはいねぇな。そもそも卵自体貴重だから全員が従魔を持ってるわけでもねぇし」


「そうなのですね。おそらくですが、これを確認できることは従魔持ちにとって重要ですから、従魔士系の職業についているなら、いずれは鑑定にも目覚めるのではないでしょうか。もしくは、他の手段で見られる可能性もありそうですが……」


「他の手段? 魔導具なんかか。あぁ、《ステータスプレート》のどっかという可能性もあるな。調べる価値はありそうだ……」

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