第329話 エネルギー

「……でもなんで、《創造主の欠片》なんてものを吸収したら孵化するんだ……?」


 首を傾げる俺や賀東さん、雹菜に静さんが言う。


「それについては、その子竜ちゃんの鑑定結果についても話さなければなりませんが……」


「そういやそうした方がいいよな。で、なんて出たんだ?」


 賀東さんが尋ねると、静さんは言った。


「おおむね、こういう感じでした……」


名称:*****

種族:竜(無)《幼体》

レベル:1/100

説明:無から世界を創造した存在の欠片を取り込み、孵化した真なる竜の一柱。強力なゼロエネルギーを吸収し続けた結果、制御出来ずにいたが、創造主の欠片を取り込んだことで力の制御が可能となった。幼体であるため、大半の力を使用することが出来ない。進化を重ねることにより、いずれ頂に辿り着くだろう。


「……なんだ、つまりどういうことだ……?」


 首を傾げる賀東さん。

 しかし雹菜はなんとなく理解したようで、言う。


「ゼロエネルギーっていうのは……卵を持ってたのが創なんだから、創の注いだ魔力のことを言ってるんじゃないかしら? でも強力すぎて制御できなかった、と。創造主の欠片は、その制御をするのに役立つ何かで……だからをそれを取り込んで、孵化できるようになった、そんな感じじゃないかしら」


「まぁ、普通に解釈すればそう読めるか……。しかしゼロエネルギー? 魔力じゃないのか?」


 賀東さんが俺に視線を向けて尋ねるが、俺にそこは分からない。


「注ぎ続けていたのは魔力だったと思うんですけど……」


「うーん? じゃあ一体……まぁ魔力だ精霊力だと不可視のエネルギーは色々あるし、《ステータスプレート》にもそう表示されるが、俺たちには詳しいことはほとんどわかってないしな。何か創の魔力には特別なものがあるってことか……」


「あくまでもそんな風に読めるってだけで、俺からすると特別な感じしないんですけどね、魔力……」


「そうか……万物鑑定士の目で見ても創の魔力は普通と変わらないのか?」


 静さんに賀東さんが尋ねると、静さんは少し考えてから答える。


「……アーツなどを使うときに見える魔力は皆さんのものと同じですね。でも……そういえば、その前段階の魔力は……違うのかも……?」


「なんだよ、歯切れ悪いな」


「いえ、ちょっと色々あって……創さん、耳貸してもらえます?」


「え? あぁ……」


 そして吐息がかかるくらいに静さんが近づいて耳打ちしてきた。

 少しブルっとするが、耐える。


「私に魔力を注いで下さるじゃないですか。そういう時の魔力って……アーツを使う時とは別ですか?」


「……あー、そうだな。なんかこう、静さん用に加工して、それから注いでるって言えばわかるかな」


「つまり、加工する前段階があるわけですよね」


「それは……そうだな」


「その魔力を、子竜ちゃんに注いでいたのでは?」


「まさにその通りだ……その状態の魔力が、ゼロエネルギー? まぁ無加工の力といえば、そうだけど……」


「今度、よく観察させてください。今まで普通の魔力と変わらないと思って真剣に見たことはなかったんです」


「ここで見せるのは……まぁ良くないか」


「えぇ。賀東さんになら見せてもいいとは思うのですけど、正直何が起こるか分かりませんし、この倉庫を吹き飛ばしたりとかしたらまずいでしょう。流石にそんなことにはならないとは思いますが、用心するにこしたことはないです」


「そうだな……」


 そんな話をしていると、雹菜が、


「……ちょっと近いんじゃないかしら。いえ、いいのだけど」


 と言った。

 別に怒ってるわけではないが、少し機嫌が悪くなったらしい。


「あぁ、雹菜。もしかして嫉妬しているのですか?」


 静さんがそう言うと、


「そっ、そんなわけじゃ……」


「雹菜にも可愛い所があるのですね……撫でてあげます」


「い、いいわよ別に! それよりゼロエネルギーは……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る