第323話 慎の武具
「……これは私から見ても良い品ですね」
静さんがそう言った。
「そうなんですか?」
慎は静さんに対しては敬語である。
というか、雹菜に対してすら、未だに敬語であることもあるくらいだ。
女性との距離の取り方が、うまいようで実のところ極端なのだった。
もちろん、これには理由があって、慎は異様にモテるためだ。
下手に距離を詰めると勘違いされることがある。
まぁ、うちのギルドメンバーに限ってはそういうことはないだろうが、外側から見られたときに変な勘違いをされることを避けるというのもある。
特に、
雹菜はいわずもがな、静さんと美佳、それにたまに梓さんもテレビに出ているらしい。
人間である三人はともかく、梓さんはあの見た目で大丈夫なのか?
誰がどう見てものじゃロリでしかないだろと思うのだが、逆にそのせいで本性というか、一体どういう種族なのかみたいな疑問は誰も抱いていないらしい。
あくまでもキャラ付けのコスプレ扱いなのだった。
まぁ、いくら魔物がいるといってもあんな珍妙な生き物がこの世にそうそう存在するとは思えないものだ……耳と尻尾だけならまだあれだが、口調が口調だし、年齢もロリで……あぁネタだなとなってしまうのも納得だった。
と、俺がそんなことを考えていると静さんは慎に説明する。
「ええ、大体の性能はこんな感じですね……」
そう言って、静さんが説明したのはこんなものだった。
名称:白騎士の鎧
性能:腕力+15 魔力+10 耐久力+25 敏捷+13 器用+20 精神力+20 固有スキル《
名称:白騎士の槍
性能:攻撃力 35 固有アーツ《¥白き
静さんからすると、武具はこのようにステータス化して見えるらしい。
といっても、これだけではなく、他にも耐久性とか取引価格とか材質とか製造方法とかまで見えるらしいのだが、全て説明しているとキリがないので、冒険者、とりわけこの場合は慎にとって重要な部分だけ抜粋して話している、とのことだった。
静さんの説明を聞きながら、慎は、
「……凄まじいですね。C級どころかB級でも使えそうな性能に思えるんですけど……」
と呟く。
これには賀東さんが、
「まぁ、無理じゃあねぇが、うちは攻撃的なタイプが多くてよ。騎士系の職業を取った奴が少なくて、遊んでる武具なんだよな、それ。だからもらってくれるならありがたいが……せっかくの良い武具を眠らせとくのも勿体ねぇ」
という。
これには慎も納得のようだった。
「なるほど……じゃあ俺はこれにしたいですね」
そう言ってすぐに決めてしまった。
俺はそんな慎に、
「いいのか? もっと色々見なくても」
と尋ねるも、慎は、
「なんだか分からないが、これを見た瞬間ビビッときたんだよな……だからこれでいい……いいや、これがいいよ。もしかしたら考えなしなのかもしれないけど」
「ふーん? そんなもんかね……?」
感覚が分からなくて首を傾げる俺に、賀東さんが言う。
「そういう直感は割とあるからな。といっても、低級向けの武具だとそういうことはないんだが、C級向け辺りからなんかこれはいけるぞって感じるときがあるんだよ。雹菜もあるだろ?」
「……ええ、それは確かにあるわ。運命……というほどたいそうなものだとは思わないけど、何かに引かれたような感覚がね。そういう直感は間違いないから、慎くんのそれも良いと思うわよ。ま、他のも見せてもらって良いと思うけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます