第322話 武具紹介
「ははぁ、なるほどねぇ……」
雹菜が納得したように深く頷いた。
賀東さんの言いたいことを理解できたのは、みんなも同じだった。
つまりは、鑑定士にとって最も尊敬すべき存在なのが、静さんということだな。
俺たち通常の冒険者にとってのA級S級みたいなものだ。
それは会えただけで興奮するというものだ。
「そんなわけで……あいつに基本的に案内させるつもりだったが、役に立たないかもしれねぇな……ま、倉庫の中については俺もそれなりに分かってるから心配はしなくてもいいが。詳しいところだけあいつをこづいてでも説明させるから」
賀東さんが呆れたようにそう言った。
静さんを前にしては言うことを聞きそうもないということだろう。
本当に普段は従順なギルド員なのだろうか、と言う気がするが、言っても仕方のない話だ。
「おい、博美! 中に行くぞ!」
賀東さんがそう言うと、佐倉はハッとした表情で、
「は、はいっ! 兄貴っ!」
と慌てた様子で先導し始めた。
……確かに賀東さんを恐れてる感じはするな。
従順というのは本当なのだろうとやっとここで納得できたのだった。
*****
「ええと、この辺りが主にC級冒険者向けまでの武具になりますね。どれもいい品ですが、選ぶのなら自分の戦い方と相談して決めたほうがいいっす」
佐倉がそう言ったので、慎が尋ねる。
「たとえばどんな感じですかね?」
「そうですね……慎さんを例に挙げると、ジョブが《騎士》ですよね?」
「えっ、あっ、そうですね……」
いきなりそう言われて少し面食らっているのは、自分の職業が何なのか、口にしていないからだ.
ステータスは鑑定系で見抜くことも可能だが、ジョブに関しては難しいのか、《中位鑑定》くらいだと分からないらしい。
しかし、佐倉は《上位鑑定》持ちである。
だから見ただけで分かったのだろう。
ちなみに、他人に鑑定をかけることのマナーについてだが、まぁやらない方がいいとはされているが、絶対にダメとかやった場合に袋叩きにみたいな罰則はない。
なぜかといえば、鑑定したかしてないかなんてした本人しか通常はわからないからだ。
こうして口にしない限りは。
まぁ、分かった時点で文句を言われたりするかも知れないが、その程度だな。
ただ、俺たちには問題もあって、見られたくない部分もある。
特にジョブについては《オリジンの従者》があるわけだが、これについては佐倉は口にしなかった。
なぜ、と思って静さんを見れば、なんだか意味ありげなウインクをされる。
彼女が何かをしたのだろうか?
ともあれ、見抜かれてないらしいとホッとした慎が、佐倉に尋ねる。
「……俺の場合、どんな武具を選んだ方が?」
「《騎士》のジョブ持ちはうちにも何人かいますが、オールラウンダーな万能型多いです。ただ、ある程度の偏りが出る人もいるのですが……慎さんはどこにも偏っていない、本当の意味での万能型であることがステータスからも見てとれますから……物理にも術にも効果の高いタイプを選ぶのがいいでしょう。たとえば、この辺りとか」
そう言って佐倉さんが棚から取り出したのは、白銀の鎧と揃いの拵えの槍だった。
「これは……ちょっと重そうですね」
「着てみると分かりますが、これは見た目よりもずっと軽いです。たとえば、現代技術で作った防刃スーツくらいの重さくらいですね。加えて、鎧は物理、術の両方による攻撃を大きく軽減します。加えて、槍の方は術の触媒として機能し、術の効力を二割増加します。もちろん、槍としての攻撃力も高く、魔力を注げば特殊な魔力刃を形成し、それを発射することもできます」
「……至れり尽くせりじゃないですか……」
説明を受けて、すでにちょっと欲しそうな慎だった。
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