第307話 ギルドメンバー
「……なるほど、そんな感じか。しかし実技実習ねぇ……あったなぁ、そんなものも」
そして時は現在に戻り、一通りの話を聞いた慎がしみじみとした様子でそう呟いた。
「懐かしいよな……と言って、俺はほとんど本当に武術だけ教わってたみたいな妙な時間だったけど」
俺がそう言うと、慎が笑って言う。
「そりゃ仕方ないだろうが。創は当時、スキルがなかったんだから……今なら全然違うことが出来るだろうけど、今度はお前に適切なアドバイスを出来る存在がいないよな。まぁ、他人のスキルを見て練習すれば扱えるようになるんだから、それだけでもいいだろうが……」
《オリジン》の能力について、的確なアドバイスを出来る存在など、この世界にはせいぜい、梓さんくらいしかいない。
梓さんでも、魔力の扱いについてはまた違うだろうしな。
あの人の扱える力は、霊力だからだ。
「あの頃にもっと色んな人のスキル発動中の魔力の流れ、目に焼き付けてばよかったよなぁ……大体は覚えてても、記憶力には限界があるし。特殊なスキルなんかだと滅多に見れないしな……」
この世に存在するスキルは星の数ほどあると言われており、見つかっていないものや、すでに見つかっていても本人が公開しないものもたくさんある。
しかし、絶対に誰にも見られないようにする、なんてことは難しく、みんな結構普通に使う。
けれど何のスキルに基づくものなのかはそれこそ鑑定系を使わないとはっきりわからないから問題はないのだ。
だからそういう時に珍しいスキルを覚えておけば、俺も使えた可能性がある。
後の祭りだけどな。
「まぁその辺はおいおい身につけていけばいいだろ。少なくとも、俺と美佳のスキルは全部見せてやるからな。お前がいない間にも結構色々覚えたんだぜ……なぁ、美佳」
「勿論よ。強くなったのも見せたいし……あっ、そう言えばあれは言った? スキル統合の……」
美佳がふとそんなことを言う。
俺が首を傾げると、慎が、あぁ、という顔をして、
「やっぱりお前は気づかなかったのか? いや、実は……」
と言いかけたところで、
「おっ、創か!?」
と言う声が会議室の入り口からして、振り返ってみればそこにはみんながいた。
みんな、とはギルドメンバー全員だな。
慎と美佳、それに雹菜以外に、樹に静さん、カズと巧……梓さんと守岡さんまでいる。
最初に声をかけてきたのはカズだな。
みんな相変わらずのようで安心する。
「みんな久しぶりだな……心配かけてごめん」
そう言ってとりあえず頭を下げるが、
「いや、気にすんなって。そもそも大まかな話聞いたけど、とんでもない目にあったらしいじゃねぇか。誰も責めたりなんてしねぇよ。それより話を聞かせてくれ! 今日はそのために集まったんだろ!?」
そう言ってくれ、みんなも同意してくれたので、俺は頷く。
「あぁ。じゃあ……雹菜、いいかな」
雹菜にそう尋ねると、
「それじゃ、みんな好きなところに座って。あぁ、そうそう、大雑把なことは全員すでに知ってると思うけど、今日聞くことを含めて、創がこれからする話は当分の間、ギルド外には決して話してはいけないわよ。ギルドのメンバーであっても、ここにいるメンバー以外には秘密。それだけのことなのを理解してね」
全員に向けて、釘を刺すように言った。
流石にここ数ヶ月見ない間に随分とギルド代表者としての貫禄がついたというか、空気がピリッとする。
ただ、それは嫌なものではなく、真摯に冒険者に取り組んでいる者の間に生まれる、責任感のようなものから起因するものだった。
全員がそれに頷いたのを確認してから、
「じゃ、そういうことでよろしくね」
雹菜がそう言って、全員が着席した後、俺は今まであったことを話し始めた……。
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