第301話 支部
ともあれ、そんな感じで雹菜との再会を果たした次の日。
俺は《無色の団》丸の内支部に向かうため、東京駅に立っていた。
東京駅の威容は以前見た時と変わっておらず、なんとなく安心する。
ただ、東京駅の地下には広大な迷宮が存在していることは誰もが知っており、駅の地下、迷宮へ続く通路へ向かう人間は通常、冒険者以外いない。
と言っても、毎日普通に電車を通勤に使っている人々は何十万にも及ぶわけで、しかも東京駅の地下といったら迷宮などなかった時も含めて、まぁまぁのダンジョン具合だった。
そこからすると、普通に迷ってしまって気づいたら周囲を歩いている人間は武具を纏った冒険者しかいなくて顔を青くする、なんてことも普通に起こる。
まぁ、そのような場合、大抵の冒険者は元の場所というか、迷宮とは関係のない区画まで案内したりするものだ。
流石に迷宮そのものへ、うっかりと足を踏み入れてしまう、ということは起こり得ない。
なぜなら、そこに入るためには数多くの冒険者が屯している入り口前広場を通らねばならず、そのような場所にスーツと鞄を持ったサラリーマンとかローファーを履いた女子高生とかが立っていれば、誰でも、あぁ、間違ってきてしまった人間だなと気づき、回れ右するように言うからだ。
それでも、中には酔狂な冒険者というのがいて、スーツ姿とか女子高生コスプレとかしながら迷宮に突入していく奴もゼロではないのだが、少数派である。
そういうわけで、いろんな意味での魔境と化しているのが、現代の東京駅なのだった。
そんな駅から丸の内方面へ出て、しばらく歩くと、その建物は見えてくる。
巨大なビルであり、それ一棟がギルド……などと言うことはなく、あくまでもワンフロア借りているというに過ぎないらしいが、それでも相当なものだ。
雹菜はヘリポートを利用して五反田まで来たので、その辺りの利用関係がどうなってるのかは少し気になるが、まぁうまくやってるのだろうと忘れることにする。
細かい契約関係については、流石によくわからないからな……一応、高校でその辺りの知識も必要だからと冒険者を目指す若者はある程度教えられるものだが、最低限に過ぎない。
以前、雹菜のマネージャーよろしくくっついて回ってた頃に実務を通じで学んだ部分も多くあるが、最終的には専門家に見てもらったりするのが基本だったし、俺自身が詳しいわけでもないのだった。
「……しかし、これだけ大きいビルのワンフロア借りれるなんて……」
俺がビルの中、ロビーで呆けていると、雹菜は慣れた様子でエレベーターまで向かう。
途中、入場ゲートがあったが、IDカードを通して進む。
俺も渡されたカードを使ってついていく。
残念ながら、ゲストカードなのだが、後でしっかりと社員証ならぬギルド証を作ってくれるという。
一応、以前作ったものもあるらしいのだが、そちらはここに居を移す前のものなので、意味がないらしい。
「みんな頑張ってくれてるからね。結構、懐は暖かいのよ。特に、慎君と美佳なんてC級に上がったのよ。流石にそこから上に上がるのは時間がかかるでしょうけど、もう独り立ち出来るくらいの力ね」
「……そんなに強くなってるのか。俺も早く追いつかないと……」
俺はいまだにE級である。
せめてD級に昇格したいところだが、そのためには迷宮探索をある程度重ねて実績としなければならない。
もちろん、ただ探索するだけでなく、しっかりと素材や魔道具などを収集しないといけない。
「既にかなり強いというか、C級でも問題ないくらいのステータスだけどね、創は……。そもそも、慎君と美佳の力がそれだけ上昇したのは、創がこっちにいた時、魔力の効率的な同化を手伝ってくれてたのが大きいもの。創がいなくなってしまってからは、成長率も落ちたわ」
「そういうものか。まぁどのくらい強くなってるのか、会うのが楽しみだなぁ……」
「慎君と美佳以外にも、みんな強くなってるから、そっちもね。まぁそれよりもまず、再会それ自体が楽しみでしょうけど。一応みんなには無事は伝えてあるけど、早く会いたがってたわよ」
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