第300話 陣術の可能性

「後は……この《マグスガルド陣術》っていうのは何なの?」


 やはり気になったらしく、そう言った雹菜に俺は言う。


「《ステータスプレート》によれば、《マグスガルド》っていうのは俺が今回行った異世界の、世界の名前みたいだな。地球は地球って表示されるし、間違いないだろう」


「それで、陣術は……?」


「これは向こうで学んだ技術だよ。魔術って教わったんだけど……ほら、こんな感じだ」


 そう言って俺が魔力で《陣》を描き、雹菜に補助魔術を付与すると、


「……補助系の術ってこと? これは……すごい強化率ね。一般的に補助術系は重ねがけしても五割上昇程度が限界と言われているけど、これは七割上昇くらいしている感じがするわ」


 地球での補助術系統は確かにそんな感じだな。

 しかし……。


「それはかなり手加減……というか、抑えてかけてるんだ。まともにかけるとここだと危険だからさ」


「……もっと強化率が上がるわけ? それは恐ろしいわね……というか、向こうは補助術系が盛んなの?」


「いや、そういうわけじゃない。向こうであったことそれなりに話したろ。パーティー組んでた……ミリアは普通に攻撃魔術も使ってたって」


「あぁ、そうだったわね」


 色々魔物を倒したことなども話したが、具体的な戦闘については大雑把にしか語っていない。

 だから俺が補助魔術をかけて、その強化によって強力な攻撃魔術を放ったとか、そのあたりについては流して話していた。


「向こうでも、魔術の系統というか、分布というか、そういうのは似たようなものだったよ。補助魔術はミリアが得意にしてたから、中心的に教えてもらったんだ……って言っても、魔術じゃなくて陣術ってものだったらしいけど」


「魔術との違いは何かしら?」


「多分だけど、陣術は規則的な図形を描いて発動させるタイプの術ってところじゃないかな? 魔術は別にそこまで規則的な感じでない時もあるから……魔術の方が概念が大きい? 陣術は魔術の一部とか、特定の分野を発展させたもの? みたいな感じがなんとなくするんだよな……。完全に包摂されてるわけじゃないのは、アーツに別の技術として表示されているからそういうことなんだろうけど」


 大雑把な予測を俺が口にすると、梓さんが、


「霊術にも同じような派生があるからそんなところじゃろうな。霊術と符術は根源は同じでも別の技術じゃし、式神術も異なるし……と、まぁそのようなものじゃろう」


 と言う。


「なるほどね……ところで、その技術、私にも使えるかしら?」


 雹菜がそう言ったので、俺は少し考えて頷く。


「多分、いけるんじゃないか? 向こうの人は俺みたいには扱えてなかったけど、雹菜なら可能だと思う」


「あら? どうして?」


「雹菜は俺と同じで魔力をはっきりと視認できるだろ? 向こうの人はそれが出来なかったんだよ。まぁ、世界中探せばもしかしたらいたのかもしれないけどな。俺が知り合った限りでは、誰も出来ないみたいだった」


「その状態で規則的な図形を……なるほど、それだと厳しいのね。でも創はできるから……」


「そう、綺麗な図形を描けば描くほど、効力が高まるみたいだった。普通の付与魔術の効力はこっちの世界と同じようなものだったな」


「これはなかなか面白そうな技術ね。しかも誰でも身につけられる可能性はある。まぁ魔力見えないといけないと言う時点で、高い効力を発揮させられる人はかなり限られるみたいだけど……」


「あぁ、あと魔力を外に放出できないといけないから、道具も必要になるな」


「なるほどね……まぁ、後で実験してみましょう」

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