第276話 魔術の威力
「これが金人形か……マジで全部金で出来てるのか? めっちゃ重い……」
もはや動くことのない、まさに金で出来た人形を手に俺はそんなことを呟く。
「正確には核と魔石以外の全て、だな。どちらも小さいらしいが……」
エリザが訂正する。
俺は、
「核と魔石ってこれ、どうやって取り出すんだ?」
何せ、全体が金だ。
取り出すには砕く必要があるだろうが、それも何か勿体無いような気もする。
繋ぎ目の一切存在しない金の人形だからな。
何か、このままでも需要がありそうな気がしないでもない。
けれどエリザは言う。
「普通に砕いてだぞ」
「このままが欲しい、とかいう人はいないのか?」
「全くのゼロじゃないだろうが……それは特殊な例になるだろうな。別に見た目が美しいとかそういうわけでもないし。よく見ると顔とか若干気持ち悪くないか?」
言われて新ためて凝視してみると、
「……確かに」
そう言わざるを得ないくらいに微妙なデザインだった。
人間っぽさがないというか、化け物感がすごいというか。
遠目で見るからキラキラして綺麗なだけだったな……なるほど、砕きたくなる。
「じゃあこれはこのまま持っていけばいいわけだ」
「そういうことだな。そいつの価値は、あくまでも深く魔力に満たされ変質した、魔金としての価値だけだ。そいつ自体の存在には別に価値はない」
「分かった……で、後は俺の魔術の威力の方を試すだけか」
「やっぱり相手は石魔導人形でいきますか?」
ミリアが尋ねてくる。
「どう思う? いや、俺はなんでもいいんだけど」
「うーん……さらに下に潜れば、石魔導人形より強力なのが出ますけど……でも、また二頭石魔導人形と戦わないとならないですから……」
「それはちょっと面倒だな。明日にはもう街に戻らないとならないし」
「そうですよね。下手をすると泊まり込みになってしまいますし……」
「じゃあ、石魔導人形で行こう。二人も、それでいいか?」
「はい」
「うむ」
******
「……試す前からなんとなく察してはいたが、とんでもないな……」
「迷宮の中で良かったわね……外だったら、被害が怖いわ……」
エリザとミリアが、俺の放った魔術の結果を見てそんなことを呟いた。
俺も少し唖然としている。
俺たちの目の前には、俺の《炎槍》を受けた石魔導人形の残骸が転がっていた。
粉々になっており、元の姿などまるで分からない。
それほどの威力を、俺の魔術が発揮したからだ。
「まさか、炎槍が十本も出たのは予想外だった。しかも、太さたるや、いずれも人間一人分くらいのサイズはあったな?」
エリザがそう言った。
「私のはせいぜい、長めの槍、くらいなものなのに……同じ魔術とはとてもではないけれど思えないわね……」
「しかもあれで加減したのだろう? ハジメ」
「あ、あぁ……起動魔力を調整すれば威力とか規模の調整も利くってことが分かったからな。それなり、くらいの感覚で使ったんだが……それでもだいぶ、酷かったな……」
「これは少し練習した方がいいな。せめて、ミリアと同じくらいの威力まで、規模を下げられるように。普通なら逆の練習をするものだが……」
「練習したところで、到達できるとは思えない威力だけどね……でも、私も練習は必要だと思います。まだ時間があるし、やってみましょう。それに思ったんですけど、それだけの魔術を放てるなら、ヴェストラ山の地這竜も倒せちゃいそうですし……コントロールできれば何よりの武器になります」
これは鍛冶屋のガランドールからの依頼だ。
と言っても、俺が勝手に身に行くだけ、という体なのでいつまでにとかそういう期日は存在しないけどな。
それでも、向こうに帰る前に片付けておきたい用事の一つでもある。
だから俺は言った。
「地這竜か……倒せれば、ガランドールにもいい報告が出来そうだな。よし、頑張ってみるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます