第274話 金人形、探す方法

 次の日、迷宮の入り口あたりまで来ると、あたりが騒がしかった。


「……一体何があったんだろうな?」


 俺が首を傾げていると、ミリアが忙しそうな冒険者一瞬止めて、


「何があったんです!?」


 と尋ねた。

 するとその男は投げ捨てるような口調で、


「金人形が浅層でも目撃されたんだ! 稼ぎ時だぜ! 悪いな、急いでる!」


 そう言って去っていった。


「ということみたいですよ」


 ミリアがそう言ったので、俺たちは顔を見合わせて頷く。


「俺たちも稼ぐか」


「中層以降ならともかく、浅層でも見つかるというのなら是非もない。行こう」


「儲かりますね!」


 そんなことを各々言いながら、迷宮の中へと走った。


 *****

 

 しかし……。


「……中々簡単じゃないな」


 俺はそう呟く。

 金人形探しに、迷宮に特攻したのは良かったが、いくら歩いても見つからない。

 同じ目的の多くの冒険者とすれ違うも、彼らもまだ戦果はなさそうな感じだった。


「浅層で見つかっていうのは気のせいだったのかもしれんな……」


 エリザがそう言う。


「えぇ、だったら無駄足じゃない……魔物も冒険者が入り過ぎてて、倒されきっちゃってるのか出くわさないし。今日は何もなしかなぁ……」


 ミリアがつまらなそうにそう言った。

 そんな最中、少し離れた位置から、叫び声が聞こえる。


「なんだ?」


「誰かが襲われた、みたいな声じゃなさそうだな。快哉の声って感じのようだが……」


 そんな話をしていると、向こうから冒険者パーティーが一組、やってくる。

 四人組で、全員がほくほく顔をしていた。

 さらに良く観察してみると……。


「……あれは、金人形……!!」


 エリザがめざとく見つけてそう言った。

 彼らの中のリーダーらしき人物の手には、小さな人形があった。

 しかも、それは眩い黄金色に輝いており、強烈な存在感を示している。

 なるほど、金人形とな名付けたくなるな、あれは、という感じがする魔物だった。

 ただ……。


「あれはもう死んでるのかな? 動かないが」


 俺がそう言うと、エリザが、


「あぁ。あれは弱い魔物だからな。ただただ素早くて小さくて見つかりにくいだけで。倒すこと自体は簡単だ。そして倒せば、体全体が黄金だからな……しかも特殊な。魔金というやつで……通常の金の何倍も価値がある」


 と答えた。


「へぇ……」


「ん……? お前らもこいつを探してるのか?」


 金人形を持った男が、俺たちに話しかけてくる。


「あぁ、そうだ。あんたらは良く見つけたな、そんな小さいの」


「おう、完全な運だったぜ……だが、運も実力のうちってのが冒険者ってもんだ。これ以上は探しても見つかる気がしないし、俺たちはもう戻る。お前らの健闘を祈ってるぜ」


 そう言って男たちは去っていく。

 気の良い冒険者たちだった、と言うよりも、良い身入りに機嫌がよくて答えてくれた感じだったな。

 欲張らないあたりを考えると、良い冒険者であるのも事実だろう。


「健闘か……もう見つかってしまったみたいだし、これ以上見つけるのは難しいかな?」


 俺がそう呟くと、ミリアが言う。


「金人形の湧きは一体だけってわけじゃないですから、可能性はありますよ! でも見つける方法が何かあれば良いんですけどね……」


 続けてエリザも言う。


「しらみつぶしは確かに辛いな。何か方法があれば良いのだが……」


「方法ねぇ……」


 少し考えてみる俺だったが、ふと、思いついたことを言う。

 それはさっきの違和感だ。


「なぁ、さっきの金人形、死んでたけどさ、妙な魔力を感じたんだが……」


「何? 私は特に感じられなかったが……ミリアは?」


「私にもあまり。死んでしまったら魔力は抜けてしまうものじゃ……」


「確かにほとんど抜けてたけどな。俺には僅かな魔力も見られる目があるし、気配も結構強く感じられるから……それを探せば、見つけやすいんじゃないかなと思うんだ」


 二人は目を見開いた。

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