第268話 創の補助魔術
「……ええと、補助魔術は《陣》をかける相手の体に描くんだったな……」
ミリアの使った補助魔術の手順を思い出しつつ、俺はエリザに補助魔術をかける。
ミリアにかけるかエリザにかけるかで迷ったが、やはり補助魔術の効力を確認するには戦士であるエリザの方がいいだろうということになった。
補助魔術のバフ効果は、本人の能力値に掛け算の形でかかるものだから、ミリアの身体能力を強化するよりも分かりやすいだろうからな。
ただ、少しばかり、補助魔術をかけるのが怖いようなところもあって、強化しすぎてまずいことになるんじゃないか、というのがあった。
しかしミリアが言うには、補助魔術の強化によってそういうことは起こらないという話だった。
そもそも、そういうことが起こるのなら、ミリアがかけるようなものでも、起こるはずだという。
高い強化率に耐えきれず、筋繊維が断裂したり、骨折したりなど、だ。
けれど、実際にはそういうことにはならない。
それは、補助魔術それ自体に、筋肉や骨なども含めて、強化に耐えられるようにバフがかかっているからだ、と。
ただそんなことを言いながらも若干目は泳いでいたが……。
ともあれ、慎重にかけることにしよう。
「……覚悟は決まっている。一思いにやってくれ……!」
エリザが悲痛な覚悟を決めた顔でそんなことを言うが、
「……いや、大丈夫だって……多分……」
俺は自信なさげにそう言うしかなかった。
動物にかけるなどの試験をしてからでもよかっのかもしれないが、そういう動物なり魔物なりが逃げ出してしまったらやばいからな……。
そして、俺は補助魔術をかけていく。
まず、エリザの体の表面に《陣》を描いていく。
ミリアの補助魔術ではそんな感じだったからだ。
そうすると、《陣》の効果なのか、エリザの体の状態が脳に直接伝わってくるような感じがした。
どこにどれだけの強化を施すべきなのか、直感的に分かる。
《陣》から注がれる力の総量が感じられ、それをどこに配分するのかは俺に委ねられているような、そんな感じがした。
ここである程度の安心を感じる。
何故なら、やはり補助魔術を俺がかけても、筋肉が断裂したり骨が折れたり、ということはなさそうだと理解できたからだ。
どれくらい強化すれば無理な負荷がかからないかが分かる。
俺はそれを調整しつつ、エリザへ注がれる強化の割合を決め、そして《陣》に起動魔力を注ぎ込んだ。
すると……。
「……ああっ!」
と、エリザが声を上げる。
どこか艶かしいような感じがするが、強化によって僅かな痛みのようなものが発生しているのかもしれない。
しかし耐えられないほどではないようで、少し頬が赤くなっている程度だった。
それにそんな時間は短時間で終わり……。
「……これが、ハジメの補助魔術の効果か……」
と、エリザは手を握ったり開いたりしながら、感嘆の声とともに呟いた。
「どんな感じだ? 違和感とかはないか? 痛いところとか」
これにエリザは答える。
「どこも全く問題ない……それどころか非常に調子がいいという感じだな! これは魔物と戦ってみたいぞ……!」
「俺は構わないが……ミリア、どう思う?」
補助魔術の専門家、俺の師匠であるミリアにそう尋ねると、彼女も頷いて言う。
「私の見る限り何か問題が発生してるという気配はないですね。実戦で試してみてもいいと思いますよ。持続時間は通常と同じかどうかとか気になるので、その辺り、エリザが気をつけながら動くと言うのなら……」
「それは当然だ。まず木人形から試せば管理できる」
「じゃあ、そうしましょうか……でも、これは見ただけで、強化率の高さははっきりしてるからなぁ……結果が少し怖いかも」
ミリアはぼそりとそんなことを言ったのだった。
*****
後書きです。
ついに星一万を超えました!
それもこれもみなさんのお陰です!
本当にありがとうございます!
著者フォロワーも一千人を超えて、小説フォローも二万人が見えてきました。
これからも頑張ってくのでよろしくお願いします!
そろそろ地球に帰らせないといけませんしね……。
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