第267話 交代
「……すごいな。このくらいの階層の魔物では、まるで相手にならないか……」
エリザが目を瞠ってそう言った。
それはここまでの俺の戦いを見てのことだ。
ミリアの補助魔術をかけられた状態で、何体もの木人形を倒したのはもちろんなのだが、その後、少し階層を降りてもう少し強い魔物にも挑戦した。
浅い階層には《
と言ってもそれほど強力なものではなく、木人形と同じ素材……木製の魔導人形である
しかしそれでも木人形よりは二段も三段も上の魔物であるのは間違いなかった。
まず、その体の大きさが全く違う。
木人形は一メートル程度しかなかったが、木魔導人形は優に二メートルを超え、胴体や腕の太さも非常に太い。
筋骨隆々の男性を、さらに二回りくらい大きくした感じ、とでも言えば分かりやすいだろうか。
そしてその巨体に見合った腕力を持っており、その腕を軽く振るうだけで地面が轟音を立てるほどの打撃を繰り出してくるのだ。
エリザが言うには、低級冒険者がそうそう相手にしていい存在ではないというが、それも納得の話だった。
しかしエリザは木魔導人形よりも一つ上のランクに相当する、
そんなことを考えて、俺はエリザに言う。
「ミリアの補助魔術の効力が高いだけだと思うけどな……普通にやったら多分、もう少し苦戦してると思う。まぁそれでも無傷で行ける範囲だとは思うけど」
「無傷で行けるのなら苦戦とは言わんだろう」
「まぁ、確かに。でもエリザも石魔導人形までは倒せるんだろう?」
「魔導人形系は倒し方に裏技があるものもいるのだ。だから真正面からやれるわけではない。考えてもみろ。私はコボルト騎士に苦戦してたんだぞ」
「言われてみれば……ちなみに石魔導人形を倒す裏技って?」
「大したことじゃないな。あいつらは水系統の魔術に弱い。水をぶっかけてやってからしばらく逃げ回って、よく染み込んだあたりで戦うと脆くなるのだ。中には全く効果をなさない奴もいるけどな……確率的には半々くらいだ」
「結構な賭けだな……通りで戦いたくなさそうなわけだ」
「それでも出会ってしまった時のことを考えると対策は考えておかざるをえまい。ま、この辺りなら出てくる可能性はほぼゼロだが……」
そんなことを話していると、ミリアが、
「すみません、お待たせして。魔力も少し戻りました」
そう言って会話に参加してくる。
彼女は結構、補助魔術を使い続けだったので、魔力がだいぶ減っていた。
そのため、わずかにでも回復させたいと、少し瞑想していたのだ。
いわく、正しい呼吸法を行えば、魔力の回復速度を上げることが出来るらしい。
この技法は向こうではなかったな。
いや、実践してた人はもしかしたらいるのかもしれないが、一般的な方法としては知られていなかった。
実際、ミリアの魔力は自然治癒分よりも一割ほど多めに回復しているようだった。
これも後で教わりたいものだ……。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
「はい、それでもいいですけど……」
と微妙な言い方をしたので、エリザが、
「どうした?」
と尋ねる。
するとミリアは言った。
「ううん、私の魔力も怪しくなってきたから、今度はハジメさんが使ってみたらどうかと思って。そもそもそのために来たわけだし、補助魔術の感じ、慣れたんじゃないかと思って」
これにはエリザも頷いて言った。
「確かにそうだな。私もハジメの補助魔術を受けてみたいぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます