第265話 迷宮
思いもかけず大儲けのチャンス到来のようだが、それでも俺たちの基本的目的はブレない。
「……第一階層は、何が出るんだったか?」
俺が尋ねると、エリザが少し考えてから答える。
「まず、《
人形系の魔物というのは地球にもいたから、俺も座学で学んでいる。
ただ東京には多く出現する迷宮というのがあまりなかったため、遭遇したことはないな。
やはり東京名物の魔物といえばゴブリン系なんだよ……もちろん、どこにでも出るあいつらだが、一番多いのは東京の迷宮だ。
ゴキブリと似たようなもので、人口多いところに出やすいのかな……謎だ。
「やっぱり、木だけあって火に弱いのか? 硬さは……まぁまぁありそうだな」
「そうだな。火炎系の魔術を使えば容易に倒せると言われる。ただ、魔術師はそれほど多くないから、みんな剣や槍で相手することになるがな……スライムやスケルトンと同じように、核を持っている。魔石ではないから、破壊しても問題ない。まぁ、核は核で価値があるから、潰さずに倒した方が身入りはいいが、中々難しい」
「核を潰さない限り、動き続ける?」
「まさにな。胸部にあるのだが、上半身だけになってもズリズリと迫ってくるぞ。意外に軽いのか、物凄い速度で迫ってくることもある。あれは中々にトラウマものだから……核を潰すのを勧める。何か特殊な依頼を受けているのでないかぎりは」
「……まず戦ってみるか……」
「それがいいだろう。それに、ミリアの補助魔術もその身で味わってみたいだろう? その方が、後でハジメも試しやすいだろうし」
「そうだな」
一応、補助魔術も含めて、一通りの《陣》については、ミリアから教えてもらって覚えている。
結構色々な形なので普通なら全部記憶なんてできそうもないのだが、なぜかできてしまっている。
この辺も、器用とかが影響してるのかな?
ステータスは様々な部分に影響するというが、どこがどこに聞いているのか、正確なところはまだはっきりとは言えないから……。
まぁ、記憶力については、高くなって悪いことはないし、気にしなくてもいいか。
ともあれそんなわけで《陣》は覚えているが、まだどれも使っていない。
理由は、言わずもがな、外でいきなり使うのは怖いからだ。
迷宮内なら何かあっても、周囲が致命的に壊れることはない。
迷宮の素材というか、作りというか、それはどこでも非常に頑丈で、この世界でも変わらないらしいからだ。
実際、この《忘れられた傀儡墓地》は大きな石材を組み合わせたような作りになっているが、その石材はとても普通の石とは思えないような強度を持っている。
思い切り剣で切り付けても傷ひとつつかない。
と言っても、不壊というわけではないようだが……。
なんで分かるかと言えば、迷宮の一部をその力で破壊したことがある存在というのは、この世界にもいるらしいからだ。
「じゃあ、かけますよ〜!」
ミリアが魔力を練り込んでそう言った。
「あぁ、頼む……」
「では……『……大いなる大気の素よ、我が声に応え、この者に力の加護を与えたまえ……《
詠唱を聞く限り、ミリアの補助魔術には地水火風の系統があるらしく、これは風系統のものなのだろう。
風で身体強化するとは?とか疑問が湧き出てくるが、ミリアの魔力が風へと形を変え、俺の周囲に集まって体全体に染み込んで行くと、その効力の方に意識がいく。
「これは……凄いな。体がすごく軽くなった感じだ。まるで風みたいに」
「ふふーん、そうでしょう! 私の補助魔術は、普通よりも効力高い方ですよ!」
そう言ってきたので、エリザの方に向いて、
「……本当か?」
と尋ねると彼女は頷いて答えた。
「それは事実だな。私は他の魔術師にかけてもらったことがあるが、ミリアのは三割り増しくらいでよく聞く。調子いいんじゃないか?」
「間違いなくな……早く魔物を見つけて戦いたい」
「いきなりは危険だから、とりあえず慣れろ。まずそれが解けるまではな」
「確かに。じゃあ型でもやるかね……」
*****
後書きというか謝罪というか注意書きです。
今日、本話である265話を公開予定だったのですが、間違って40分くらいの間、間違って266話だけ公開してる状態になってて、一旦266話は下書きに戻しました。
266話は改めて明日公開します。
265話見逃してる人もいるかなと思ったので、一応の注意書きでした。
よろしくお願いします。
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