第253話 二人へ
あれから少し待ってはみたのだが、神らしき何かだというあの女の姿は影も形も現れることはなかった。
まぁ、本人も力の限界がどうとかそんなことを言っていたので、あの感じでも頑張って出てきてくれたのかもしれない。
そうなると、会いたくても当分会うことは出来ないと考えるべきだな。
ただ、とりあえず今、最も必要な情報については過不足なくくれたと思う。
俺が地球に戻る方法と、この世界と行き来する方法だ。
他にも色々知っていそうな感じだったというか、ポツポツと言ってはいたけれども、どれも俺の頭では完全に理解し切ることはできないものばかりだ。
向こうに帰って、ギルドメンバーたちと情報を共有して、みんなで考えた方がいいやつだろうな……。
そんなことを考えながら、俺はゴズラグを担いで、彼の宿に置いてきた。
一応、酔う前に自分の宿についてはどこなのか彼は言っていた。
ベロベロになった時に運んでもらうため、必ずすべき冒険者の流儀なのだという。
その時、俺も自分の宿を言っておいたが……こういう時運ばれるべきは俺の方なのではないか、と思った。
ベテランが新人の世話を焼くというのがお約束なのではと……まぁ、ゴズラグに関しては、異世界でのお約束を一つ消化してくれたのでいいことにしておくか。
今回のことも含めておけば、何だか重要な場面に立ち会ってくれてるし、普段はいいおっさんだ。
ゴズラグを宿に置いて自分の宿に戻ると、かなりいい時間になっていた。
宿の食堂では夕食は当然既に終わっていて、パラパラと客が酒とつまみを楽しんでいる。
そんな時間帯だな。
しかし、そこに意外にもミリアとエリザの姿を発見する。
「おぉ、二人とも。まだ起きてたのか」
俺が意外そうにそう言えば、
「ハジメさんが戻ってきてないから、待ってたんですよ。で、こんな時間になっちゃって……」
とミリアが言ってきたので俺は慌てて謝る。
「それはすまなかった。色々とあってな……」
これに、エリザが、
「いや、私たちも途中まではただ待ってたが、酒が入って来てからはそこまで気にしてなかったから構わんよ。それより、何があったんだ? 少し顔色が明るくなった気がするが」
と言ってきたので、俺は自らの顔に触れる。
意識してなかったが、今までは少し暗い顔をしていたのかもしれない。
まぁ、地球に帰れなさそうだと不安だったからな……それが解消されて、顔色にも影響したのだろう。
ともあれ、二人には説明した方がいいだろうな……。
《異邦人》であることは伝えているし、大まかなことも話しているけど、細かいことはまだ言ってないこともある。
秘密にしようというより分かりにくいだろうと思って言わなかっただけだが、帰ることになるのだ。
全部言っておこうと思った。
「ちょっとな。説明したいんだが、ここだと何だから……」
「では、部屋のほうに行くか」
「あぁ」
*****
「それで、何があったんだ?」
エリザに尋ねられて、俺は先ほど、廃教会であったことを説明した。
さらに、俺自身の詳しい出自なども含めて、全部だ。
二人の《異邦人》の認識は、この世界の、たとえば別大陸から俺がやってきた、というものだが、明確に異世界からやってきたことも話す。
すると、二人は目を見開いて、
「……異世界。そんなものが……」
「確かに他の大陸とかから来たとしても、何だか不思議なところがありましたけど……」
そんなことを言う。
「まぁ、簡単には信じられないよな……分かってる」
俺も苦笑しつつそんなことを言うが、二人とも首を横に振って、
「いや、信じるぞ」
「ええ、私も」
と言ってきた。
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