第226話 ランク
「ええと、お名前はハジメ・アマサワさん、出身はカーク村で、得意なことは魔術と剣術で……と。承知しました。特に問題ないようですし、このまま登録しますね」
職員が俺にそう言った。
「試験とかないのか?」
気になって尋ねると、職員は、
「本当に完全な未経験者の場合は試験というか、講習を受けてから、ということになるのですけど、魔術が使えるのであればそういった義務はありません。もちろん、受けることも出来ますが……ミリアさんは今度受ける予定でしたよね?」
「はい。あまり大変なことはやらないが基本を教えてくれるという話だったので……」
「ハジメさんもご一緒にどうですか?」
職員の言葉に、俺は少し考える。
別に受けなくても地球での冒険者とやることはほぼ一緒では?
だったら、今更受けなくても、という気がしたからだ。
しかし、この世界特有の事情とかそういったものもあることは考えられる。
そもそも地球だと、迷宮内でしか活動しないのが普通だったが、この世界だと、人が住んでいる街など以外の土地は、全て地球の魔境みたいなものだと思った方が良さそうだ。
それを考えると、色々と冒険者の常識も違う可能性が高い。
ミリアやエリザに聞けばいい、とも思うが、彼女たちだって全てを知っているわけでもないしな……よし。
「じゃあ、お願いしたい。いくら払えば?」
講習なのであるから、講習費が必要だろうと思ってのセリフだった。
しかしこれに職員は少し驚いた表情で、
「……意外ですね」
と言ってくる。
「何がだ?」
「……冒険者ギルドに登録しに来た駆け出しに、講習を受けなければ登録できない、という話をすると、なぜか無料だと思っている人が大半なものですから……」
「いや、試験費用みたいなものだと思えば、金がかかるってのが普通だろうと思うけど」
地球だってなんかの資格を取りたいなら、試験費用がそれなりにかかるものだからな。
「残念ながら、そう考える人は少数なのですよ……ですから、話が早くてありがたいです。講習費用は銅貨三枚です。ここでお支払いに?」
「……めっちゃ安いのな。払うよ」
銀貨一枚を渡すと、
「では銅貨七枚のお釣りです。安いのは、やっぱり無一文に近い人が講習を受けようとする場合が多いので、可能な限りお安くしているのです。でも流石にただには、というわけで。では、講習は三日後です。当日になってからやっぱり受けない、となってもお金はお返しできないのでそのつもりで。ただ、受けなかったからといってペナルティとかは特にないので、必要ないなと改めて思ったら前日までにお知らせください」
「わかった」
「後は……あぁ、ランクのお話がまだでしたね。冒険者ギルドでは、ランク制度を採用しておりまして、依頼を受け、実績を積むにつれて、冒険者としての格……冒険者ランクが上がっていきます。それによって、受けられる依頼の種類や数などが増えていきます。また、報酬額も上がっていきますし、特権なども与えられるようになりますので、どうぞランク上昇を狙って頑張ってください」
「ちなみにランクって、最高は?」
「一番上は一つ星ランクですね。そして一番下は十星ランクです。ハジメさんは今登録したばかりですので、十星ランクから始まります」
「上げるにはどれくらいかかるものなんだ?」
「十星から九つ星に上がるのには、大体十件程度の依頼を受ければほとんどの人が上がりますね」
「大体?」
「ええ……依頼の達成状況によりますので。評価が良ければ数件で上がることもありますが、こちらはまれですね。やはり、皆さん最初は慣れていないので」
「……なるほど」
そんな感じで、冒険者ギルドの制度を詳しく説明されると、しばらくして、ピーッ、という音がした。
どうしたのかと思っていると、職員が、
「あぁ、出来上がったみたいです。はい、こちらが冒険者証です。身分証明証としても扱えますので、紛失されないようお気をつけください。また、使い方については……」
「それについては私が教えますから、大丈夫ですよ」
ミリアがそう言ったので、俺も頷いて、
「そういうことみたいだから、説明はもういいかな。登録はこれで完了か?」
「はい。これで今日からハジメさんは冒険者です。今からでも依頼を受けていかれることは出来ますがどうされます?」
「いや、今日のところはいいよ。じゃ、世話になった」
「はい。これからどうぞよろしくお願いします」
そして、
「じゃあ行くか」
とミリアに言うと、
「はい!」
と笑顔で頷いたので、そのまま出口に向かおうとした。
それなのに、
「……おい、そこのお前」
と突然声をかけられる。
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