第219話 提案
「……浮遊大陸に《神の鎖》、ですか……」
また随分ととんでもないものが出てきたな、と思う。
RPGゲームとかではありがちな存在だとは思う。
だから別に想像の埒外とか、そういうわけではない。
けれど現実にそんなものが存在していると言われると……驚きではあるな。
物理的に一体どんなふうになってるんだ?
まぁ魔力とかある時点で物理とかそんなもの気にするなって話かもしれないが。
一応、地球では魔力もまた物理学の対象として色々考察されたり、性質が解き明かされて実用化してる技術なんかもあるので、大陸が浮いてようがそれが鎖で係留されてようがそれもまた、物理の範疇と言えば範疇なんだけどな……。
「驚かれるということはご存じなかったのですな……ということは南の竜月大陸ご出身やもしれませんな。あそこは魔境が多いゆえ、人も少ない。未開拓な土地も多く、よく分かっておらんのです。ですから中央では常識的なことも、あまり伝わっていないのやも……」
「……なるほど、そうかもしれません。ところで、そのように話されるということは《異邦人》というのは、別の大陸から何らかの理由で、その……」
「ええ、飛ばされた、《転移》した存在のことを言いますな。歴史的には竜月大陸か、浮遊大陸の住人なのではないか、と言われています」
「それはどうして……?」
「歴史上、現れた《異邦人》というのは、皆、隔絶した能力を持っていたからです。身体能力に恵まれたもの、魔術に長けたもの、技術に秀でたもの、さまざまですが……いずれも世界を一変させたとも。詳しい話はどこでも残ってはいないのですが、世界各地に、彼らが残した遺構や技術などが今でも存在しておりまして、それらは現代の技術ではとてもではないが再現できないものも少なくない……」
「それは例えばどのような……」
「わかりやすいもので言いますと、《灯火》の魔導具がありますな。今ではかなり普及しておりますが、古い時代は高価で効率の悪いものか、迷宮産のものしかなかった。しかし今では、まぁ誰の家でもとまでは言いませんが、少し蓄えがあるものなどには買える程度の品です。これは、かつて《異邦人》が伝えた技術によるものだと言われております」
魔導具を改良する技術、か……。
地球にも職人はいて、そのくらいのものならば作れるだろう。
しかし、分解して見てみないと、どのレベルかは分からない。
いずれ購入して見てみたいところだが……。
「しかし進んだ技術など持っているのに、未開な《竜月大陸》や《浮遊大陸》出身だと言われるのはなぜです?」
不思議に思った点があったので俺は尋ねる。
これにグラズ村長は、
「少し語弊がありましたな。未開、というのは、中央の人間があまり情報を得られていない、というくらいの意味合いが強いです。もちろん、何度も調査など出ているのですが、それらの地域の詳細については分かっていない……《竜月大陸》は強力な魔物の巣窟だと言われていて深く入り込めず、《浮遊大陸》に至っては魔大陸まで辿り着くのが限界で、《神の鎖》を前に諦めて帰ってきたとか、そのような報告が多いようです」
「もしかしたら、そこには文明があるかもしれないと……」
「あるかもしれませんし、ないかもしれません。魔物の強力さから考えると、ない可能性が高いですが……しかし《異邦人》が来たとなればその辺りからしか考えられない。そんなような話ですな」
「理解しました……」
うーん、こうなると帰るための情報を得られるかどうか……。
本当にこの世界の《異邦人》がそこから来たなら、戻れたとしてそれらの大陸になってしまいそうだ。
そうではなく、俺は地球に戻りたいのだから……。
そのためにはどうしたものか。
そんな風に俺が悩んでいることを察したのか、グラズ村長は、
「……まぁ、こんな小さな村の村長の知識ではその程度、ということです。大きな町に行けば資料も多くあるはず。ですから、もしも知りたいことがおありであれば、まずは領都にでも行ってみたらいかがですかな」
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