第211話 第二階層

「……第二階層はこうなってるのか……」


 第二階層に入ってみると、そこは鬱屈とした洞窟だった。

 第一階層が比較的開けた草原のような空間だったことと比べると、少しばかり戦いにくそうだな、と感じる。

 その代わり、大量の敵に囲まれた状態で戦わなければならない、みたいな事態は減りそうだな。

 第一階層では、五匹くらいの集団と戦っていたら、少し離れた位置に新たな集団が現れて、こちらに気づいて一緒になって襲いかかってくる、みたいな事態も起こり得る。

 幸い、俺の場合はそんなことが起こる前に、出会ったグループを全て倒していることが大半だったので問題ないが、駆け出しはその辺りの周囲の警戒に苦労する、と迷宮入り口に屯してるベテランたちから聞いていた。

 迷宮入り口に突っ立ってる冒険者って暇なのか、と思うこともあるが、そうやって有益な情報を後輩に忠告がてらくれてることが多く、なるほど、冒険者とは助け合いとはこのことか、というのを感じ入る。

 あと単純に冒険者稼業なんてやってると、他の一般的な職業についている人間と友人になれる、なんてことが少なくて、迷宮入り口で同じく冒険者である面々と会話する方が暇つぶし気晴らしになるってのもあるな。

 俺も、休みなのにギルドビルに行ったりすることはあるし、他のメンバーも意外といたりするからそんなものだ。

 どうしても、冒険者というのは一般人からは怖がられやすいし、仕方がないことだと言える。 

 彼氏彼女問題というか、結婚問題もそこそこ深刻に話題に上がることもしばしばだ。

 彼女の方が腕力強いとか普通にあり得てしまうからな、冒険者と一般人カップルだと。

 いや、冒険者カップルでも彼女の方がランク高いなんてことはありふれている。

 戦闘力という点について、概ね男の方が強い、なんていう価値観は冒険者の登場と発展と共に、崩れかけている部分があるのだった。

 そうは言っても、一般人だと普通に通用する話なので、冒険者がいるときは、という限定がつくが。


「……ここに出るのは、コボルト系が大半だって話だったな……」


 コボルト、いうまでもなく犬系の獣人系魔物の一種で、最下級のものはただコボルト、と呼ばれる。

 犬や狼がそのまま立ち上がったような姿をしているが、前足は人間のように道具を扱える指を持っている。

 しかし犬や狼としての性質も失っていないのか、四本足で素早く走ったりすることもあるので、人間とは戦い方が同じとは言えない。

 それは武器を持っていても同じだ。

 ちなみに大きさは結構まちまちで、かなりの巨体を持つものもいれば、相当に小柄なものもいる。

 当然、大きい方が力が強く、強力で、こういった迷宮の低階層にはあまり出てこない。

 この辺で出現するのはせいぜい……。


「お、いたな」


 少し先に、コボルトたちが五匹いるのが見えた。

 それぞれが周囲を警戒するように別の方向を向いている。

 身につけているのは……革の鎧に剣、という組み合わせが三体。

 他には鎧は同じだが、弓を持っているものが一匹と、杖持ちがいる。

 《騎士の巣窟》とは言っても、全てが剣を持ってるというわけではないのだとそれで分かる。

 まぁでも、兵種が分かれていると考えると騎士らしい感じはするか?

 うーん、迷宮の考えてることは分からない。

 いや、迷宮が何か考えてるのかどうかがそもそも謎だが。

 よくアナウンスされるから、何かしらの意思がありそうだと無意識に思ってしまってるところがあるな……。

 ともあれ。


「早速倒すか」


 そう呟いて、俺は地面を踏み切る。

 第二階層攻略の開始だった。

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