第186話 美佳VS慎

 向かい合う美佳と慎。

 開始の声と共に、両者は同時に動き出した。

 と言っても、戦闘のスタイルは正反対。

 美佳は術士タイプであり、慎は戦士としてのそれだ。

 そのため、慎は美佳へ距離を詰めるために地面を踏み切ったが、美佳はその場に留まり集中した。

 もちろんそれは術の発動のためである。

 一対一の戦闘の場合、当然の如く、術士の方が分が悪いのが通常だ。

 それは、術士はスキルを放つための集中が必要だが、戦士系はただその持つ武器を振るえばいいだけだ。

 だから通常、ソロでのこのような組み合わせでの戦いになった場合に定石と言えるのは、戦士系がまず即座に距離を詰めて一撃を食らわせる、という方法である。

 慎はまさにその教科書通りのやり方で立ち向かうべく、地面を踏み切ったわけだ。

 加えて、慎はこの初撃こそが、試合の趨勢を決める最も重要な機会になることを察していた。

 美佳の力を誰よりも知る慎である。

 術師系が接近戦や白兵戦に弱いという一般論に頼った戦い方をすれば、むしろやられるのは自分の方だと理解していた。

 事実、美佳は慎に距離を素早く詰められようとしているのにその顔には焦りが見られなかった。

 彼女の目には自分の……慎の姿が見えているというのに。

 そしてそのことが恐ろしくてたまらない。

 こんなことはまるで予想済みだとでもいうような、そんな雰囲気が。

 けれどそれでも、慎の取れる最も合理的な攻撃方法はこれだった。


 そして、慎は美佳の直前、槍の間合いまで辿り着く。

 可能な限り、素早く攻撃できるように既にその槍は引いていた。

 後はそのまま突き込むだけ……それで彼女を倒せる。

 そのはずだ。

 美佳の防御力は、低い。

 防具の質はいいし、そこらの魔物に何度か攻撃されたところで大した傷を負わないとは言えるが、慎の全力に耐えられるほどかといえばそんなことはない。

 だからこその、確信を持った攻撃だった。


「……悪いな、美佳ッ!」


 そう叫びながら、半ば勝利を確信した一撃。

 しかし……その槍の穂先は、


 ーーガキィン!!


 という音を立て、美佳に命中するほんの数ミリ前に、何か固い壁に命中したかのように大きく弾かれる。

 慎は、残念なことに美佳の最初の試合を見ておらず、その現象に心当たりはなかった。

 だからこそ生まれた油断だった。

 対して美佳は、自分の策略が嵌まったことに口の端を上げる。

 そして、慌てて下がり、体制を整えようとする慎に、


「……こっちこそ悪かったわ。慎……耐えてね」


 そう言った。

 そして、美佳の元へと急激に集まる強力な魔力の気配に、慎は震える。

 

 ーーまずい、《上級炎術》かッ……!!


 他の属性の術ではここまで強力な魔力を美佳はまだ、扱うことができないと知っているからこその確信だった。

 しかし、そのことは別に事態を好転させることはない。

 それどころか、ますます危険な状況だと理解させられるだけだ。

 美佳の《上級炎術》は、他のどんなスキルよりもこなれていて、使い慣れている。

 だからこそ、精度も威力も段違いだからだ。

 かくなる上は、耐え切るしかない……。

 慎はたった一瞬の判断の中で、《下級盾術》スキルの中の《堅盾》を発動させる。

 目の前に、強大な豪炎が生まれ……。


「……《炎の世界ムンドゥス・イグニス》!!」


 慎に容赦なく襲い掛かった。


 *****


 後書きです。

 書いてたら一回全部データ消えちゃってしまってやる気が駄々下がり、ちょっと今日は短めに……。

 明日は頑張りますのでよろしくお願いします!

 下の星を押してくれても喜びます笑

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る