第175話 宮野静《中》
三人の少年少女が、私、宮野静の家にやってきたのだ。
一見して、みんな純朴そうな、それこそ、その辺にいそうな子供たちに見えた。
実際、年齢的には完全に子供で、やっと成人になったかどうか、というくらいの頃合いなのは鑑定をせずとも簡単に分かった。
けれど、必ずしもそう簡単には理解できない存在であることを、私は彼らのことを鑑定することで知ったのだ。
全員を見てみたが、いずれも物凄い表示ばかりだった。
まず、顔立ちの整った、おそらくはこの集団の代表だろう少女は、そのステータスがとてもではないがその年齢には似つかわしく無いくらい、強力無比なものだった。
名前:白宮 雹菜
年齢:18
職業:氷剣士 オリジンの従者
称号:《B級冒険者》《白の氷姫》《若者達のアイドル》《インフルエンサー冒険者》《[無色の団]ギルドリーダー》……
腕力:240
魔力:247
耐久力:270
敏捷:298
器用:225
精神力:189
保有スキル:……《下級汎用術》《最下級氷術》《下級氷術》《中級氷術》《上級氷術》……《魔力強化》……《上級細剣術》……
保有アーツ:《氷姫剣術》
化け物だ。
先ほど来た中年冒険者など、目ではない。
それこそ小指一本で捻ることができるほどの実力。
《B級冒険者》と書いてあるが、これは嘘では無いだろうか?
少なくとも、私は幾人かのB級冒険者に会ったことがあるが、彼らの数値を優に超えている。
これは完全にA級クラスのステータスだった。
S級に関しては私でもそうそう会える相手ではない……というか、私自身も逃げ回っているし、向こうも向こうでおかしな能力を持ってしまった存在の苦悩を分かっているのか、それ程しつこくは追ってこないから、面識がない。
そもそも忙しいというのもあるだろう。
ただA級も片手で数えるほどだが会った機会はあり、ステータスも見たことがある。
この雹菜は彼らと同じだけの数字を持っているのだ。
流石は、A級冒険者を姉に持つだけはある、ということだろうか。
雪乃は友人であるが、彼女とかなり近似している数字だ。
ただ、雪乃はどちらかというと精神や魔力の数値がもう少し高く、反面腕力はもっと弱かった。
雹菜は前衛タイプということだろう。
敏捷の数値も三百に迫っている……彼女が本気で動けば、私などの目には一切留まることはないだろう。
彼女が本気で私の能力を欲し、捉えようとしたなら……まぁ、抗いようがない。
ある意味で諦めがつく相手であった。
次に、一見少年とも少女ともつかない、小柄な人物だ。
その名前は……星宮樹、というらしかった。
名前:星宮 樹
年齢:18
称号:《E級冒険者》《星宮家の継嗣》……
職業:治癒術師
腕力:24
魔力:46
耐久力:22
敏捷:27
器用:26
精神力:35
保有スキル:《最下級治癒術》《下級治癒術》……《下級短剣術》……《下級杖術》……
保有アーツ:なし
樹に関しては、ステータスそのものについては、普通、だった。
E級にしては悪くはないかな、F級にいれば優秀な方だろう。
その程度のもの。
しかし《星宮家の継嗣》、この表示が問題だった。
星宮家といえば、いまや世界的な大企業となった、迷宮産業系の大企業である。
その継嗣、と記載されているのだ。
間違いではないかと詳しく鑑定してみるも、やはり何も間違いではないことがわかってしまっただけだった。
なんでそんな人物が冒険者などをあらためてやっているのだろう?
資産家が《ステータスプレート》を手に入れるために魔物を倒したりすることはいまや珍しくはないが、せいぜいその程度で、本格的にスキルを色々取得できるまで努力することはない。
そんなことをするなら、経営の方に力を入れるのが普通なのだ。
ましてや星宮家ともなれば……。
それなのに、この数字は間違いなく、普通に冒険者をやっていることを示している。
それが奇妙極まりなかった。
一体なぜ……。
しかしそのことまでは鑑定では表示されない。
万物を鑑定できる、と言いながらも意外と不便なところは不便なのだった。
樹本人の脳みそを、かなり真剣に鑑定すれば色々と読み取ることは不可能ではないが、これには相当な力を使う。
おいそれとできる事ではなかった。
そして最後の一人、ぼやっとした顔の、三人組の中で最も平凡そうな少年である。
彼はどう見ても、普通の人間にしか見えなかった。
振る舞いも、雰囲気も普通で……。
二人の付き添いか何かか?
と思った。
しかしとりあえず、と鑑定してみると……。
名前:天沢 創
年齢:18
称号:《スキルゼロ》《冒険者見習い》《地球最初のオリジン》《総理(日本)の救出者》……
職業:魔術師
腕力:103
魔力:179
耐久力:156
敏捷:125
器用:2908
精神力:3090
保有スキル:無し
保有アーツ:《天沢流魔術》《天沢流剣術》
……度肝を抜かれた。
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