第164話 鑑定結果
「まず、この《卵》の正式な名称からですが、《神魔の卵》というものです」
静さんがそう言った。
《神魔の卵》。
何か物騒な名称だが……それにしても。
「……妖怪の卵じゃないんだな……」
「え?」
見つけた場所が場所だったので、そんな感じかと思っていたのだが全然違うようだった。
静さんは首を傾げているが、その卵が採取された場所については鑑定できないのだろうか?
いや、場所だけ分かっても妖怪の里の近くだとはすぐにはならないか。
鑑定には結構な力を使うらしいことが、さっき彼女自身が言っていた、疲れる、という言葉からも察せられるし、今は卵自体の情報を鑑定する方に力を入れていて、その周辺情報については詳しく見ていない感じかな?
聞いてみないと分からないが、まぁ、今はいいか。
「いや、こっちの話だ。それよりも説明の続きを……」
「ええ……。《神魔の卵》……不可視のエネルギーを栄養として吸収し、育つ獣の卵。孵化するのに十分なエネルギーを摂取した時、中からその獣が現れるだろう。光が生まれるか、闇が現れるかは育成者次第。自らから出でた闇に食われぬよう……。87/100。だ、そうです。随分と物騒な説明内容ですね」
確かに聞いている限り、ちょっと怖い。
というか……。
「その説明文みたいなのは何です?」
と、雹菜が気になったようで尋ねる。
俺も同感だったので、静さんの答えを待った。
すると彼女は、
「《万物鑑定》を使うと、こういった説明文が見えるのです。まぁ、価値の低いものについてはそんなものないことも少なくないのですけど、迷宮から得られたような品には大体書いてありますね。それに一般的な品でも書いてあることはあります。その辺の生活雑貨でも。ただ、深い意味はないことが多いので……あんまり気にしなくても構わない場合が大半ですね」
「でも今回のものは……」
「そうですね、この《神魔の卵》それ自体の説明文でもあるのでその部分については気にした方がいいでしょう。光か闇が生まれる、というのは、そのまま何が生まれるかは育成者の性質による、と言った感じではないでしょうか。似たような品についてはいくつか見たことがあります。《下級騎獣の卵》とか《妖精の卵》とか。その中にも、近い説明はあったので……」
「そうなんですね……あと、数字の、87/100というのは……」
「これも他の卵系でも似たような表示は見ましたね。と言っても、他のだと日数が書いてあることが大半でしたが……この卵の説明から見るに、栄養として吸収したエネルギーの量でしょう。今は孵化するために必要なエネルギーの87%が充填されている、ということだと……あぁ、やはりそれで正しいようです」
静さんは改めて卵をしっかりと見つめながらそう言った。
数字の部分について、さらに深く見てみた、という感じだったな。
やはり、詳しいことを見るには強い集中が必要なのかもしれない。
なんでも鑑定できる、と言ってもいくらでもいつでも一瞬で全ての情報を見られる、というわけではないのだろう。
それから、
「……おや? 数字の部分を詳しく見てみると……創 68 雹菜 15 その他 4 となっていますね。これは……」
それを聞いてなるほど、と思った。
「創、これって多分、あれよね?」
「まぁ、そうだろ。雹菜も魔力吸わせてた分が反映されてるんだろうな。その他は……まぁ、迷宮にあった頃に吸った分か」
妖人たちの霊力を吸った部分が4なのだと思われた。
それ以外もあるかもしれないが、俺と雹菜が吸わせた分から見ると微々たるものだろう。
「心当たりがあるのですね? では気にしなくても構いませんか……孵化するまであと13%ということですから、遠からず孵化するでしょう。何が生まれるか、私も気になりますね……」
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