第151話 ドロップ品確認

「どんなものが出るか楽しみだぜ。特殊ボスっつったら、身入りがいいことでラッキー扱いするやつも少なくないからなぁ」


 カズがワクワクした様子でそんなことを言う。

 もちろん、俺もその気持ちはよく理解出来る。

 今まで出会った特別なボスたち。

 彼らの残した品々は、どれも通常では考えられないような価値を持つようなものばかりだったからだ。

 今回もあれらと同じようなもの……は流石に難しいにしても、一般的なF級やE級が手にできる品とは格の違うものが期待できるのではないか。

 ただ、巧はカズの言葉に少しだけ呆れたような表情で、


「確かにドロップ品は期待出来るだろうが、あんなボスが低層でホイホイ出てきて、それを幸運扱いするなんて気がしれないけどな、俺は……。今回は勝てたが、堅実に生きないと冒険者なんてすぐに死ぬぞ」


「それは分かってるって! でも今くらい、ワクワクしててもいいだろ?」


「ま、それはな。俺もそこのところは同じだし」


「な! 創! 早く確認しようぜ!」


「急かすなって。分かったよ……」


 ちなみに、なぜ俺に急かすように言ってるかといえば、俺が収納袋を持っているからだ。

 ドロップ品はさっき、そこに投げ込んでさっさとボス部屋を出た。

 見せてよかったのか、となるかもしれないが、そこのところは雹菜はくなのネームバリューを活用させてもらった。

 過保護なギルドマスターが今回の試験だけのために貸してくれたのだと。

 大規模ギルドなんかだと、有望な冒険者に少しばかり身の丈に合わなそうな武具や魔道具の類を貸与することは間々ある。

 俺たちのギルドはかなり小規模であり、少数精鋭でやってる印象があるのか、特に俺のこの言い訳について誰も不自然には思わなかったようだ。

 実際、別に嘘ではないからな。

 雹菜は比較的、過保護なところがあるし、収納袋も借りてるものだ。

 俺がかつて手に入れたものは、ちょっとばかり持ってると問題が起こった時に取り返しがつかないので雹菜管理であるし。

 そんなことを考えつつ、いそいそとドロップ品を出していく。

 

「まずは……こいつからか」


 俺がごとり、と地面に広げた布の上に最初に置いたのは……。


「これはあのドラゴンゾンビの魔石だね……いやはや、やっぱり大きいなぁ。でも、本物のドラゴンとか、レッサードラゴンのそれと比べると小さい、かな? やっぱり低層で出現するレベルギリギリの魔物だったってことかなぁ……」


 樹がその少し青みがかった黒色をした魔石を矯めつ眇めつしながらそう呟く。

 実際、その評価は正しいだろうな。

 本来、第三層に出てくるだろうボスのものよりはおそらくは大きい……が、かといってレッサードラゴンとして適切な大きさというわけでもなく、かなり小さい。

 宿っている魔力は俺の目から見ても相当なものに思えるが、それでもC級がいれば十分になんとか出来る、D級ならパーティーを組めば倒せるだろう、というくらいの魔物の魔石に感じられた。

 あのドラゴンゾンビの出現はイレギュラーではあったが、俺の《オリジン》由来の特別なボスなどとは違って、本来の迷宮の生み出したボスである、という可能性が高そうだ。

 

「あんなのがまた出てきたら勘弁だけどな……数十、いや数百回に一度あるかないかだろ、あんなの」


 カズがそう言う。


「もっと低いんじゃないか? それくらいだと確率論的には結構起こるものだからな……一万回に一回とか……もっと低いかも」


 巧の言葉に、カズは呆れたように、


「そんなものを俺たちは引いちまったのか……運の悪さここに極まれりだな……」


 がっくりとそう呟く。


「しかも試験当日にね。笑っちゃう……けど、結構いい稼ぎになりそうじゃない? この魔石だけでも数十万円にはなるだろうし……ねぇ、創、他には?」

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