第146話 共闘

「うおらぁっ!」


「……よし、今だ!」


 カズと巧の二人が、二メートルほどあるストーンゴーレムを押し込んだ。

 かなりの重さ、かなりの圧力だったろうが、重戦士である二人にとっては拮抗できるだけの相手だったようだ。

 俺は……まぁ、俺もやろうと思えば普通にできるだろうが、単純なステータスだけだと難しいかも知れない。 

 カズたちは何かスキルを活用しているようで、その動きは俺も記憶したから、後で試してみようと思う。

 防御系のスキルは、かなり重要だ。

 そして、俺は二人の合図を確認して、押し込まれたストーンゴーレムの額に突きを入れた。

 すると、剣はそこにするりと差し込まれ、奥にあった核を貫くような感触がし、そしてそこでゴーレムの体はガラガラと崩れる。

 後には、ストーンゴーレムを形成していた石材の山と、そして核とは異なるエネルギー源たる魔石が残されていた。


「よっしゃ!」


「いい感じだな!」


 カズと巧が手を掲げ、俺と樹にハイタッチを求める。

 パァン、といい音が響くが……。


「……なんだか魔物を呼び寄せそうだな?」


 と俺が口にすると、カズたちは、しまった、という顔をした。

 なんというか、ちょっとこうして付き合ってみると愛すべきボケ枠という感じがするな。

 

「いや、大丈夫じゃないかな。この辺りはゴーレム系の住処みたいだけど、彼らは音ではなくて視覚で敵の位置を確認していると言われているし」


 冷静にそう言ったのは樹だった。


「まぁ確かにそうだけど、ほかの魔物も普通にいるかもだろ?」


「それはね……ま、今後はハイタッチはやめておこっか」


「二人とも、ちょっとハシャいじまって、すまねぇ」


 カズがそう言った。

 しかし樹は、


「いいよ、別に。さっきから、ずいぶんうまく連携が決まっているし……僕も最初は、なんだかんだ言って、創と二人だけの方が早かったかも?って思ってたけど、さすがに重量級相手だと厳しかったかなって思い直してるから。組んでよかったかな」


「そう言ってもらえると多少は役に立ってるって思えるぜ」


「多少どころじゃ……ねぇ、創」


「あぁ。正直俺はあんまり重量級相手は得意じゃないからな。特に、無機物系は」


 デカい敵とは戦ったことはある。

 だが、生物型が多く、そう言った相手の場合、狙うべきところが結構はっきりしているし、いくら大きくても重要な器官を潰せば結構なんとかなるものだった。

 だが、ゴーレムのような相手は別だ。

 全体が堅い素材で覆われているため、それこそ先ほどのように急所……額などを一撃で貫くような先方によるか、本当に力押しでいくしかないのだが、それをやるには一人だと少しばかり面倒くさい。

 ああやって注意を引きつけておいてくれる人間がいるだけでも、体力の消耗はかなり押さえられるのだった。


「本当か? おまえは一人でもいけそうだが」


 巧がそう言ったので、俺は答える。


「まぁ、無理じゃないけどな。それでも面倒くさいのは間違いない……三層のボス戦控えてるんだし、体力も魔力も温存しておきたいし、その辺を考えるとな。やっぱりパーティーってのは大事だと思ったよ」


「ま、それならよかったと思っておこう。で……そろそろ見えてきているが……早速行くか? あぁ、でも先客がいそうだが……」


 巧が額に手を当てて、少しばかり離れた位置に存在する大扉の方を見つめた。

 通路の先には第三層ボス部屋の巨大な扉が存在している。

 そして、その下には俺たちと同じく受験者と思しき四人組が何か相談事をするように円を作っていた。

 おそらくは、ボス戦前の最後のブリーフィングと言ったところだろう。

 

「俺としては後でも先でもいいが……別に一番乗りじゃないと受からないってわけじゃないだろ?」


 その辺については巧たちのほうが詳しいだろうと思っての質問だ。


「あぁ、それはそうだ。それどころか順番なんて関係ない、ということもあるぞ。重要なのは、あくまでも内容だからな……では、とりあえず大扉の前まで行くか。彼らが先に行きたいようなら行かせる方針でいいのか?」


 巧が全員の意向を確認するように見つめるが、誰も否とは言わなかったので、


「じゃあ、そういうことにするか」


 と俺が言い、そのまま、大扉の元へと向かったのだった。

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