第101話 創の職業

「納得いかないのは、だ。なんでお前らには特殊職まで与えられてるのに……」


「創だけ、職業を得てもスキル一つ得られないのかって? いやぁ、それは俺に聞かれてもなぁ……」


 慎が俺のぼやきに微妙な表情をする。

 俺は自らの《ステータスプレート》を見つめた。


 名前:天沢 創

 年齢:17

 称号:《スキルゼロ》《冒険者見習い》《地球最初のオリジン》《総理(日本)の救出者》……

 職業:魔術師

 腕力:69

 魔力:74

 耐久力:88

 敏捷:74

 器用:1408

 精神力:1580

 保有スキル:無し

 保有アーツ:《天沢流魔術》《天沢流剣術》


「……しみじみ思うけど、いい加減バケモノだよな……」


 慎が後ろから覗き込んでいった。


「ステータスだけはな。特に器用と精神力だけは伸びが止まらない。でも他のステータスは微妙に伸びにくくなりつつある……」


「って言っても、まだ伸びてるだろうが! 俺や美佳を軽々抜いてってるんだぜ、お前……。そこそこ有望扱いされてた俺たちをだ」


「そこは意外だったな。でもお前たちも追い上げてきてるだろ」


「そりゃあな。そうそう負けてはいられねぇし……あとは本当にお前のステータスの伸び悩みだよな。なんで器用と精神以外伸びにくくなってんだ?」


「理由は良く分からないけど……」


「しかも職業のシンプルさな」


「あぁ。《魔術師》って。なんだよそれ、とは思わないけど……」


 俺は一応、総理を助けた後、優先的に職業に就ける機会を得た。

 と言っても、あの後、すぐに各地に《転職の祠》なるものが出現し、そこから《転職の塔》の《初期職転職の間》まで転移して、転職する冒険者が増えたから、そんなに速さには意味がなかったが。

 《転職の祠》は日本中の人間が驚いたが、何よりもすごかったのはもちろん転職それ自体に他ならないが、もう一つあって、それは《転移》を可能にしていることだ。

 各地の《転職の祠》まで、ノータイムで行けてしまうのである。

 ただ、意外にも利用する資格のようなものが存在していて、冒険者として何らかの条件を満たしていないと使えないらしい、と言うこともわかっている。

 それなりに冒険者として経験を積んでいる、と言うのが大雑把な認識だが、細かいところはわかっていない。

 しかしその感じからするとなぜ慎と美佳はいけたのかが微妙だが、彼らは俺と一緒に、分不相応とも言える強敵と相対しているし、それに加えて、《オリジンの従者》という特殊職に就ける条件も満たしていた。

 それが理由なのではないか、とはギルドメンバーではとりあえず納得している。

 それ以上は考えたところで今はわからない、と言うのが正直なところだな。


「まぁでも、術士系の職業に就ける人間でも、それは初期職に現れたって話は聞いたことがないから……やっぱり特別な職業なんだろうな。あまりにも一般的な名詞すぎるから微妙に感じるだけでさ」


「あぁ……美佳にも現れなかったんだよな」


「あいつに出てきた術士系の職業は、水術士と風術士と地術士と、そして炎術士だけだ。全部極めれば全術士になれる!とか言ってるけど……」


「いや、そんな職業、確認されてないだろ。というか、上級職?にはどうやればなれるのか、分かってもないからな」


「一応《転職の塔》のあのダンジョンはまだ先があるから、進めばいいんだろうが……」


「無理だろ。あの先にいたの、レッサードラゴンだって聞いたぞ。今のS級が挑んでも厳しいって話だ」


「そういうこった。S級でも倒せない……いや、今のS級も、迷宮を作ったやつってもんがいるとすりゃ、そいつから見ればまだまだって事なんだろうな。レッサードラゴンくらい倒せるレベルにならなければ、さらに上の職業に触れる資格もありません、と」


「厳しい話だよな……」


「だが、そこまで強い魔物が現れてくれたお陰で、冒険者業界は空前の盛り上がりを見せてるからな……俺たちの母校も含めた、冒険者高校関係の来年の予想倍率、聞いたか?」


「何倍なんだよ?」


「三十倍だってよ。いやぁ、俺たち入った時は、二倍に届くかどうかで、それでもヒィヒィ言ってたのによ。今年は今年で十倍くらいだったが……」


「……俺たち、今なら絶対に受かってないな」


「まぁ、そもそも冒険者としての適性があるかどうかで半分くらいにはなるんだろうけどな。それでももう半分は普通に学力試験だから……いや、恐ろしいね」

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