第97話 職業とギルド
「……ってことは、職業、そのわけわかんないのにしてしまったのか!?」
「訳わかんないって、わかるじゃない一応。オリジンの従者よ」
俺の驚いて言ったセリフに、少し口を尖らせながら答えた雹菜だった。
「いや、でも、職業ってなんか重要そうだろ。得たからどうなるかとかは分からないけど、なんかこう、ステータス補正とか、新しいスキルとか、色々ありそうじゃないか。それなのに……」
また別の職業になれるのかとかも分からないが、最初の機会に《オリジンの従者》なんて選んでしまうとは。
いや、でもかなり特殊なもののようだから、そこで選ばないと消えるとかいう可能性もあるか?
そう考えると最初に選んだのは正しかったのか……?
俺がいろいろとぐるぐる考えて頭を抱えていると、雹菜はあっけらかんとした口調で、
「あぁ、それなんだけど、そっちは問題なさそうなの」
という。
俺が首を傾げて、
「……どういうことだよ?」
と尋ねると、彼女は笑って言った。
「どうもね、《オリジンの従者》というのは……なんていうのかしら。サブ職業?みたいな感じというか。他の初期職も、一つ選ぶようにと指示があったのよね。そっちは私《氷剣士》にしたから」
「……そうなのか……良かった……」
なんとなく、ほっとした俺だった。
「厳密には《特殊職》なんだけどね。もしかしたら《特殊職》の特殊である所以は、他の職業も一緒に選べるから、なのかもしれないわね。まぁ、選べる《特殊職》、《オリジンの従者》しかなかったからその推測が正しいかどうかは謎だけど」
「他の二人には選べなかったのか?」
二人とは紬と美柑のことだ。
「聞いてはいないけど、反応から見て特殊なものはなさそうだったわね……。選んだと言ってたものも、特別なものという感じではなかったわ。まぁ、私には選択肢として現れなかったものだったけれどね」
「ってことは、職業って人によって選択肢がかなり違う?」
「おそらくは。《初期職》、というから誰でも選べるものは同じかと一瞬思ったのだけどね。そうでもなさそう……選べる基準は、今までの経験とかかしら? 少なくとも私の《氷剣士》はそういうものに思えるし、他の二人が選んだものも、それぞれの能力や戦い方に沿っているものだったわ」
「あの二人が選んだのは……」
「《精霊術士》と《獣剣士》、と言っていたわね。紬は魔力の他に、精霊力を扱える珍しいタイプでね。精霊の力を借りて、強力な術を発動できるの。依城さんの方は、その身に獣の力を発現させて戦う、強力な戦士で……まぁ、つまり順当なところよね」
「あの二人、そういう力を持ってたのか……でも、言ってよかったのか?」
どんな能力を持ち、どんな闘い方をするのかは基本的に人には言わない冒険者が世には多いからこその質問だった。
「構わないわ。そもそも《精霊の仮宿》のメンバーは、そういうタイプ……魔力以外の力を宿して戦うメンバーを集めたギルドなのよね。だからギルド名もそうなってる……で、あんまり隠すつもりがないから、はっきりとギルド名にしてしまってるのよ」
「それはまた、どうして?」
「簡単よ。同じ仲間を集めたいからよ。まぁ……紬の目立ちたがりなところもあるけれどね」
「集めたいのは、同じタイプの方が、連携をとりやすいから?」
「それもあるけど、紬たちのようなタイプはね、その能力に目覚めた時、結構周りに被害を出すことが多くて……まぁ、結構厳しい事情に置かれてる子が少なくないの。だから、本当にギルドを《仮宿》に、と思ってるって」
「紬から聞いたのか」
「そうよ。以前、ギルド名の相談した子がいるって話をしてたでしょ? それがまさに紬よ」
「あぁ、そういえばそんなことも言ってたな……」
「ま、そんな訳だから、あの子の目立ちたがりにもそこそこ理由があるわけ。あんまりうざいとか思わないであげて」
「安心してくれ。思ってないから」
「そう、良かったわ……あっ、そこの先に二人ともいるみたいね。あともう一人魔力が……総理かしら?」
通路の先を見ながら雹菜がそう言ったので、俺も頷いて先に進む。
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