第74話 ドロップ品
「なんでそう言い切れるんですか?」
慎がそう尋ねた。
これもまた、雹菜の推測を疑って、というわけではなく単純な疑問なのだろう。
これに雹菜は答える。
「簡単な話よ。慎君や創がある程度とは言え、体術で戦えてたみたいだから」
「っていうと……?」
「私、今の二人の実力なら多分、五秒あれば伸せるもの」
「えっ……!?」
慎が驚いたように、声を上げたが、すぐに、
「……いや、そりゃそうか。B級なんですもんね」
「そういうこと。確かに《豚鬼将軍》の時はどうにも出来なかったけれど……あの時は、創が実力以上の力を出して、しかも純粋に破壊力特化で攻撃したから倒せたのよ。あの時と、今回の奴の倒し方は違うからね……まぁ、もちろん絶対とは言えないし、私も過信するつもりはないけれど……そうね。私の推測が正しいかどうか、今度みんなで模擬戦でもしましょう。適当な武闘場を貸し切れば、創も気にせずに実力も出せるでしょうし」
「大丈夫なのか?」
この大丈夫、にはいろんな意味が込もっていたが、雹菜は全てを理解した上で頷く。
「問題ないわ……この間の、盗聴防止の魔道具、あれと同じ性質のものをいくつか持っていけば、監視もされないし……そもそも、そういう危険のある武闘場なんて借りないけれど。あとは、壊さないで済むようにグレードの高いところを選ばなきゃ。美佳も《上級炎術》使ってもいいんだからね?」
「えっ、私が……雹菜に撃ってもいいってこと!?」
流石に人間に向ける破壊力の術ではない、と美佳は認識しているようで、それはその通りなのだが、雹菜は言うのだ。
「ええ。《上級炎術》、であっても駆け出しが撃った程度の術でやられるほど私、やわじゃないから……って、馬鹿にしてる訳じゃないからね?」
「それはわかるけど……もしものことが起こったら」
「大丈夫。心配しないで。百歩譲って何かが起きるとしても、大丈夫な武闘場を借りるから。いくつかあるのよ、便利なところ」
「あぁ、学校の設備と同じような?」
「そういうこと。魔道具使ってるから、決して安くはないけどね……必要経費よ」
「わかった……あっ、必要経費、で思い出したのだけど、《ゴブリン
「それもあったわね……何が出たの?」
「ええと……創」
美佳に促されて、俺は袋を出す。
小さな革の袋だ。
しかしそれを見て、雹菜は顔色を変える。
「これは……まさか!?」
「……知ってるのか?」
「知ってるわよ、それは。大規模ギルドだと、高位冒険者パーティーには持ってるところが多いわ。でも、迷宮産のものは滅多に出ない……だから、素材回収は簡単じゃない、んだけど……。そもそも、皆もこれが何かは分かってるのよね?」
三人揃って、その言葉に頷く。
そして、代表して俺が答える。
そもそも、これを俺が持っているのは、三人で相談した上でのことだからな。
俺としては誰が持っててもいい、と言ったのだが、慎と美佳がトドメを刺したのは俺だからと言って譲らなかったのだ。
そんなドロップ品。
こいつの名称は……。
「いわゆる、《収納袋》とか《アイテムボックス》とか呼ばれるものだよな。《インベントリ》っていうやつもいるけど……ゲームの《インベントリ》みたいな便利さはないから微妙な気がする」
「中身が一覧になって表示、とかはされなかったもんね」
美佳が俺の言葉に頷いてそう言った。
続けて慎も、
「入る量もまだよくわからないもんな。一応、ドロップ品は全部入れたけど、まだまだ入るっぽいし……時計を入れてみたら、入れた時間で止まったまま出てきたから《時間停止》か《時間遅延》効果もありそうだなって話になってて……」
と話す。
この会話を聞いていた雹菜は目を見開き、そして呆れた顔をして、
「……三人とも、これについても、ここにいるメンバーだけの秘密にしておかないとダメよ。《時間停止》《時間遅延》の《収納袋》は……滅多にないの」
「えっ、でもあるって教科書とかで読んだ記憶が……」
「あるにはあるわ。でも、細かいこと書いてなかったでしょ? 容量がひどく小さなものしかないのよ。でも、それがあるってことは、大きいものもいずれ探せばあるはず。そう思ってトップギルドは探しているのだけど……まさか貴方たちが手に入れてしまうなんて……」
*****
後書きです。
どうにも話がずれがちと言う指摘を受け、これについてはそうだなぁと自分でも思っていたところなので、ちょっとずつ考えて改善していこう!と思ってます!
今回と次回は書き溜めだったのでいつもの調子ですが、その後は頑張ってみるのでよろしくお願いします!
もし、変わらなかったらごめんなさい……!
とりあえず、頑張ってみます!
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