第68話 諸々と、ドロップ品

「やっぱりな。アーツとして認められたわけだ……」


 俺がしみじみとそう呟くと、慎が尋ねてくる。


「結局、アーツってなんなんだ? あんまりまだよく分かってないんだよな……政府発表もまだだし」


 これについては雹菜から聞いた話があるので、それについても話す。

 アーツに関しては、あくまでも雹菜に話せる範囲で、ということで聞いていたし、そのうち政府からの発表もあるだろうからと特に秘匿されるべき情報ということではなかったので、話しても問題ない。

 それに、実際のところ、今はまだあまり分かっていない上、俺と雹菜の間で達した結論はざっくりとしたものだ。


「大まかには《今までこの世になかった技》ってことみたいだぞ。俺の《天沢流魔術》みたいにな」


「俺のはスキル組み合わせただけなんだが……まぁ、下級と最下級とはいえ、幾つも組み合わせたわけだし、初めて使った、と言われたらそうなのかな?」


「二人ともすごいじゃない! 私もそういうの欲しかったけど……残念ながら何にもないわね。ステータスはどうも大分上がってるけど」


 美佳がそう言ったので、俺は、


「あっ、忘れてた! 《ゴブリン暗黒騎士ダークナイト》のエネルギー……おっ? これはもしかして……」


 そう叫び、後ろを振り返ると、そこには《ゴブリン暗黒騎士ダークナイト》の亡骸がまだ、そこにあった。

 通常、迷宮の魔物はボスモンスターであっても、倒せば数分でほとんど迷宮に吸収されてしまうものだ。

 しかし、稀にこのようなことはある。

 そういう場合、魔物の素材というのは貴重な物資として高く取引される……のだが。

 今の俺にとって重要なのはそこではなかった。


「悪い、二人ともちょっと待っててくれ!」


「え?」


「あ、あぁ」


 唖然とする二人を置いて、俺は《ゴブリン暗黒騎士ダークナイト》に近づく。 

 そして、その体の奥に残る魔力を操り、吸収していった。

 近づいたのは、その方が魔力の操作が楽だからだ。

 距離に比例するように操りにくくなるんだよな……。

 まぁ、あの位置からでも出来たが、やっぱり体力は温存しておきたいというか、ボス戦後なのでもうくたくただった。

 これ以上、体力を消費したくなかった。

 それにしても……。


「これがボスモンスターのエネルギーか……とんでもないな」


 今まで倒してきたアイスゴブリンなど目じゃないと言っていいほどの、大量のエネルギーを感じる。

 自分の魔力に同化させていくことも大分大変なくらいだ。

 腹一杯なのに無理やり食べ物を押し込んでいるような感覚がする……でも、まだ入る、みたいな。

 破裂したりしないよな、これ……?

 そして《ゴブリン暗黒騎士ダークナイト》に残っていた魔力、その全てを吸収し終わる。

 全てと言っても、残念ながら大分ロスはある。

 魔力の操作力が上がったのか、前よりは効率が良くなっているのだが、それでも半分くらいで、残りは空気中に霧散してしまった。

 しかしそれでも相当な力になったことを俺は感じた。

 実際、振り返って慎と美佳の顔を見ると、驚いたようにこちらを見つめていた。

 これについてはまだ話してなかったからな。


「それは……どういうこった?」


「急に力が増したような気がするわ……」


「これも色々と話すと長くなるんだが……それは後にしよう」


「え?」


「まず、こいつ解体して、あとドロップ品を持ち帰ろう。じゃないと、他の冒険者も来ちゃうだろうしな」


 言われて、そのことに思い当たったらしい。

 二人とも頷いた。

 色々ありすぎて、頭が大分麻痺していたようだ。

 それは俺も一緒だけど。

 説明も最初からここを出てから、でも良かったのだが、気まずい状態で帰路について、連携やらに齟齬が出ても困るからな。

 核心的なことについては全部話した上で、細かいことは後で、くらいですむ今がちょうどいいだろうと思った。


「そういやそうだな。幸い、まだ人は来てない……ま、来たら扉の向こうでも魔力で分かりそうだが。ボス倒すと、なんか壁無くなったみたいに外の気配もわかるようになるな」


 慎がそう言った。

 先ほどまでは、まるで結界でもあるかのように、内と外の気配の差が分からなかった。

 だが、今は結構わかるのだ。


「それより、何かドロップ品あるの? 今更だけど、あんなにすごいのだから楽しみ……なんだけど、私たちが持って帰って、売買したりして大丈夫かしら?」


 美佳が少し不安そうにそう言った。

 これは駆け出しの冒険者とかが分不相応なドロップ品をたまたま手に入れた場合、高位冒険者から無理やり奪われたりすることがあるからだな。

 だがこれについては……。


「その辺は雹菜に頼らせてもらっていいだろう。それに、二人に話してしまったことは、雹菜にも話しておきたい。美佳も前から会いたいって言ってたし、ちょうどいいだろ?」


 ******


 後書きです。

 まず、フォローしてくださってる読者様の人数が一万人を超えました!

 ありがとうございます!

 もっと頑張ります!

 それと、結構この作品は勢いで書いてしまってるところがあり、気になる部分が色々出てきてますので、ちょろちょろ手を加えたりしようと思っております。

 本筋は変わったりはしないのですが、細かいところにこれから変更など加えるかもしれませんが、お許しください。

 全面改稿するためにしばらく休止に、とかはしないのでご安心ください。

 時間ある時に見直して少しずつ直していく、くらいのつもりです。

 よろしくお願いします!

 そして、いつも読んでくれて、本当にありがとうございます!

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