第48話 美佳のステータス

「お、美佳か。お前はどうだった?」


 慎が美佳に尋ねる。

 彼女は顔を顰めて、


「どうだったって、何がよ」


 と聞いてくるも、分かっていないはずもない。

 慎が念押しするように言う。


「そりゃ《ステータスプレート》のことに決まってるだろ?」


「ま、そうよね……二人は? もう見せ合ったの?」


「俺のは見せたが、創は見せたくねぇみたいだぜ」


 慎がそう言うと、美佳は心配げな様子で、


「……えっ、ということは、まさか……」


 と口を抑える。

 それが何を言いたい表情なのかは明らかなので、俺は慌てて、


「いやいやいや、慎にも言ったけど、俺が実は隠し子で、とかじゃないからな? ちょっと他に事情があるだけだよ」


 と言うと、美佳はほっとした顔でため息をついた。


「なんだ。私はてっきり……。ま、そういうことなら無理に見せてとは言わないわ。でも私のは見ていいわよ。ほら」


「慎もだったけど、個人情報なのにお前ら軽く人に見せすぎだろ……?」


「何よ、今更隠すことなんて……あっ、ちょっと待って! 流石にスリーサイズは隠させて!」


 俺が手に取ろうとした美佳の《ステータスプレート》を急いで引っ込めて、それから何かを念じるような顔をし、よくよく《ステータスプレート》を確認してから、改めて美佳は俺にそれを渡してきた。


「スリーサイズか……言われてみればそんな表示もあったな。男にとってはあまり意味がないけど」


 慎がしみじみとした表情でそう言う。


「まぁ、確かにな……いや、ボディビルダーとかなら意味があるんじゃないか? 厳密にいうなら、スリーサイズだけってよりも、腕周りとかその辺も書いてあった気がするしな。あとは筋肉量とか?」


「体鍛えやすくなって便利か。今の時代、純粋に筋肉をデカくする人って少なくなってきてるみたいだしなぁ」


 それはもちろん、筋肉量そのものがその人間の腕力などを表すようなものではなくなったためだ。

 今は、スキルや魔力などが、その人間の能力を定めている部分が大きい。

 ただ、冒険者ではない人間、どうしても冒険者としての才能がない人間にとってはその限りではない。

 それに、見た目のかっこよさというのもあり、確かに昔より、筋肉そのものを鍛える、という人は減ってはいるものの、それなりの競技人口は維持してはいる。

 冒険者が筋肉をつけることも、全くの無駄、ということもなく、迷宮や魔境に行って魔物を倒した方が腕力などは上がりやすいが、そもそもの筋肉量に比例している、という研究結果もあるから、そこのところは人それぞれでもある。

 なので《ステータスカード》のこの表示は結構有用ではあるな。


「ボディビルの話はいいわよ。それより私のステータス!」


 美佳がそう言ってきたので、


「おっと、話が逸れて悪かったな。どれどれ……」


 そう言いながら、慎と共に、美佳のステータスを見た。


 名前:山野 美佳

 年齢:17

 称号:《冒険者見習い》……

 腕力:12

 魔力:72

 耐久力:15

 敏捷:14

 器用:28

 精神力:42

 保有スキル:《最下級炎術》《下級炎術》《中級炎術》《上級炎術》《最下級水術》《最下級土術》《魔力強化》……

 保有アーツ:無し


「……元々知ってたとはいえ、凄まじいな。炎術特化で、上級まで……《魔力強化》は、多めに魔力を使うことで術の一撃の威力を上げるんだったよな」


「そうよ。でもあんまり便利じゃないというか、難しい術の威力を上げるのはなかなかね。私も今は上級炎術については無理だわ。中級も、中程までしかできないわね……」


「そうなのか……」


 そのうち見せてもらって、俺にも出来ないか試したみたいと思ってたのだが、そうなると難しいかもしれないな。

 《最下級身体強化》ですら、あの複雑さだったのだ。

 さらに細かな魔力の制御が必要になってくることは目に見えている。

 それでも、俺にはそれしかスキルを使う方法がないのでやるしかないのだが。


「あっ、それより、慎は《ステータスプレート》見せなさいよ。あんたは別に見せてもいいんでしょ?」


「おぉ、ほれ」


 二つ返事で渡す慎。

 美佳はそれを見て、


「……何よこのスキルの量……いえ、聞いてはいたけど、こんなにとは思ってなかったわ……」


 美佳には俺と慎で共有してるほど、細かなスキルの数を言ってなかったからこその驚きだった。


「って言っても、ほぼ最下級と下級スキルだけどな。一つだけ、中級があるくらいで」


「それでも……それに、ステータスの数字、バランスいいわ。これが万能型ってことなのね」


「多分な。でもお前だって魔力の数値、すごいだろ」


 慎が言った通り、美佳の魔力の数値は突出していた。

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