第46話 《ステータスプレート》が変えるもの
次の日、朝起きてスマホの電源をつけると、俺はビビる。
「……メッセと電話の件数がやばくないか……?」
一件ずつ、慎と美佳のものがあるが、その他は全て雹菜からのものである。
とりあえず、これは何か緊急の要件があるのだろうと考えて電話をかけると、
『あぁっ! やっと出た!』
と、少しキレ気味に言われる。
雹菜にしては若干珍しいその態度を以外に思う。
「やっとって、今のいままで寝てたんだよ。七時だぞ?」
『いえ、それは分かってるけど、深夜の……ほら、あれがあったの、気づいたでしょ?』
まさかそこまで鈍感ではないでしょうね、と言外に言われているような気がする。
まぁ、もしかしたらただの頭痛か、と思って眠り直していた可能性はないとは言えないので、反論し難いところだが。
ただ、しっかりと気づいていたので、俺は言う。
「あぁ、《ステータスプレート》のことだろ? 流石に分かってるよ……地震だと震度3でも目が覚めなかったりするけど」
『信じ難いわね……私は震度1でも気づくのに』
「むしろ1は繊細にすぎるだろ……いや、それは今はどうでもいいか。で、どうしたんだ? 別に《ステータスプレート》の内容についてだったら、雹菜の頭の中にも焼き付けられただろ?」
『えぇ、もちろん。色々と面白いし、これからはスキルを調べるのが楽になってよさそうだけど、それより今は創、貴方のことよ」
「それは俺も同感だなぁ……」
鈍感なフリをしながら話してはいたが、本当に何も分かってないわけじゃない。
というか、雹菜も俺の異常性を認識しているがため、《ステータスプレート》に何が表示されているのか気になる、ということだろう。
それにしてもこんなに連絡をくれるとは思いもよらなかったが。
若干のんびりしすぎたかもな……。
俺の言葉に雹菜は電話の向こうで息を呑んで、
『……やっぱり、何か特殊な表示があったのね!?』
と尋ねてくる。
俺は、
「あぁ。それはもう、色々とな……」
『だったら教え……いえ、電話じゃやめた方がいいわね。どこで誰が聞いてるか分からないし。今日、会って話せる?』
「あぁ、問題ないぞ。俺もそのつもりだったんだ」
『えっ?』
「今の俺の事情、全部知ってるの雹菜だけだからな。相談してくて』
『あ、あぁ、なるほど。そうね。同感だわ。じゃあ待ち合わせは……』
それから、時間と場所を決めて、電話を切る。
今日俺は学校があるので、もちろん、放課後、ということになった。
リビングに降りると、すでにそこには佳織起きていて、テレビを見ていた。
「……早速会見してるんだな」
テレビには昨日と同じ場所で、《ステータスプレート》について話す五十嵐官房長官の姿があった。
ただ、話している内容は大したものでもない。
そもそも《ステータスプレート》についての細かな内容は、これを出すことが出来る冒険者の資質持つ者ならみんな頭の中に焼き付けられているはずだからだ。
ただ、あくまでも国民に混乱を来さないように、今後の《ステータスプレート》の扱いについて話している。
重要そうに思うのは、基本的に《ステータスプレート》の内容は他人には見せてはならない、と繰り返し言っていることだろう。
まぁ、書いてある内容がないようだ。
スキルやステータスの数字のみならず、他にも医療的な情報や戸籍上の情報など事細かに書かれているのだから。
他人に見せられないのは当然の話だろう。
「これは録画だけどね。六時くらいに会見したらしいよ」
「そうなのか?」
言われてみると、テロップが出ていて、朝番組の見慣れたロゴと時刻表示が見える。
なるほど、ニュースとして報道しているだけか。
そう思ってしばらく見てると、すぐにスタジオに映像が変わり、アナウンサーや有識者と呼ばれる者たちの会話に映った。
『朝から大混乱ですが、この会見についてどう思われますか』
『いつもいつも対応の遅い我が国にしては迅速な会見だったと言っていいでしょうね。内容も適切だ。特に個人情報としてしっかりと管理すべきというのは、私も同感です。すでにこちらに何件か寄せられている情報として、卑近な例を申し上げますと、この《ステータスプレート》によって家族の血のつながりがないことが明らかになった家庭もあるようで……』
『……それは養子だった、とか?』
『それだけならマシなのでしょうが、不倫なども関わっている例も少なからず……冒険者としての資質があれば、十歳ほどであっても《ステータスプレート》を出現させられるようですから、これは色々な問題の種になりますよ……』
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