第30話 告白

「そう、相談」


 雹菜は俺の言葉に、真面目な顔で頷いて答えた。

 真剣な表情だとクールさが目立つが、別に怒っているとか文句を言いたい、という訳ではないのは分かる。

 だから俺は気軽に尋ねた。


「それはなんだ? もしかして、効率のいい戦い方をレクチャーしてくれるのか?」


 先ほどのゴブリンとの戦いを見て、B級冒険者としての経験から、何か良いアドバイスをくれるのかと思った。

 それが一番ありそうに思えたからだ。

 だが、雹菜は微妙な返答をしてきた。


「うーん、それも一応、あるにはあるけど、一番話したいことはそれじゃないの」


「っていうと……なんだろうな? 何も思いつかない」


「そう、よね……うん、ちょっと、私の告白を聞いてくれる?」


「告白って……まさか、俺のことを……」


 俺がそう言うと、雹菜はそんな風に聞こえる台詞だったことを理解してか、少し顔を赤くしてから慌てた様子で、


「違う違う! そうじゃない!」


 と全否定した。

 まぁ、俺だってわかって言ってる。

 何だか肩に力が入ってる様子だったから、少しだけ茶化してみただけだ。


「だろうな。雹菜が俺のことなんか好きになるわけもないし……で、なんだ?」


「えっ? いや、そんなに卑下したものじゃないと思うけど……って話がずれていくわね。本題に戻るわ」


「あぁ」


 今度こそ俺も真面目に頷く。

 すると雹菜は話はじめた。


「冒険者にも色々いるのは知ってると思うんだけどね。全ての冒険者の持ってる力は、千差万別で、一様じゃないことも分かってるわよね」


「それはもちろん。だから身につくスキルも、人それぞれだ。俺みたいに何にも身につけられないようなのは少数派だろうけど、そんなのもいるくらいには、冒険者の才能は人によって違う」


「うん……スキルが、一番分かりやすく才能が出る。でも、私たち高位冒険者の間で、才能の差、と言ったら別のことを指すことが多いの」


「へぇ? それは知らなかったな。まぁ高位冒険者の知り合いなんて、雹菜くらいしかいないし、仕方がないが」


 高位冒険者、と一般的に言ったら、B級以上のことを指す。

 C級くらいだと、ベテランとか実力者、とかそれくらいの言い方になるな。

 だが、C級でも十分に名の知れた、強力な腕を持つ冒険者たちになるし、それこそ学校で専任教師をやることも出来るくらいだ。

 だから、B級なんて普通はあんまり知り合いになることなんてない。

 俺が雹菜とこうして知り合ったのは、本当に偶然の、僥倖なんだろうなと改めて思う。

 そんな雹菜が続ける。


「もし私以外のB級以上と知り合いでも、多分、この話はしなかっただろうと思うわ」


「そうなのか?」


「ええ……ある程度の実力がないと、言われてもよくわからない、とか、そんな話はない、で終わってしまうことだから。と、前置きはこれくらいにして、私たちが言う才能の差っていうのはね、いわゆる、スキル外スキルをどれだけ上手く使いこなせるか、になってくるの」


「ん? っていうと……」


「魔力の操作とか、魔力の気配を感じ取る、とかね。それくらいは分かるでしょ?」


「まぁな。スキル使う時、みんなやってることだし。ただある程度以上はあまり意味がないって言われてるからみんなそこまで極めないけど」


 俺はそれ以外やることがなかったから、気持ち悪いとまで言われるくらいに鍛えてきた。

 ただやったところで何かに使える訳ではない。

 だから、ペン回しみたいなモノでしかない。

 ペンは、字が書ける程度に扱えればいいのであって、それ以上のクルクル回したりが上手になったところでしょうがない、ということだ。

 けれど、雹菜は言うのだ。


「それはあくまでも俗説なのよ。というか、中級と言われるスキルくらいまでなら、確かに差がわからないけれど、それ以上になってくるとかなり大きな差になってくるの。これは私たちの間ではよく知られていることよ」


「そうなのか……それは、なんていうか、意外だな」


 意外だが、俺にとってはやはり何の意味もない。

 俺には、スキルがないから。


「がっかりしないで。まだ話は終わってないから」


「ええと……?」


「スキル外スキルには色々あるけれど、特に天賦の才能、と言われてるものの中に、魔力視があるの。何だか、分かる?」


「……名前から察するに、魔力を見れるってことか?」


 俺にも出来る。

 そういえば、雹菜も出来てるみたいだったが。

 そこまで考えたところで、雹菜が言った。


「そう。そして……私にも、魔力視の才能が、ある」


「……うん、知ってるけど、それがなんだ?」


「えっ!?

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