第35話 最終章 死地のその先1
人物紹介
ホラズム側
シャイフ・カン 北城本丸守備の指揮官。
オグル・ハージブ
クトルグ・カン ウルゲンチの政府軍の実質的な総指揮官。
人物紹介終わり
その夕刻。
南城の内は全く静かであった。
そしてやはり泥濘。まさにあの作戦の成功のゆえであり、
本丸を出て、ここに至る前に通った北城の内を想い出さざるを得なかった。本丸と南城をつなぐ地下道は泥に埋まり、地上を歩いてきたのだった。やはり、そこも泥濘にまみれており、死体がたくさんほったらかしにされておった。あるいは、せいぜい脇にどけられておるくらいであった。その様は
ようやくそれから解き放たれたのは、ここまで案内してくれたその者の配下に礼を言い、館へと入ったときのことであった。
オグルと再会したゆえであった。よもやということを考え、
変わったものばかりではなかった。
変わらぬもの。それは、ひげ面の中に浮かぶ友人の懐かしさをたたえた表情であり、恐らく己も同じものをうかべておるに違いない。
「あのときは、
その館は、クトルグ・カンの司令部兼居所の近くにあり、何かあれば、すぐに呼べるようにとの配慮のゆえであろう。側近たるシャイフ並みとまでは行かなくとも、それに準ずる扱いであるは確かであった。
「うむ。ようやく、我も少しは認められたらしい」
気恥ずかしげな表情を浮かべて、そう言う。
「当たり前のことよ。
「うむ。大通りの一隊を委ねられた。多少なりとも撃退の一助にはなったと想う」
「我なら、迎撃部隊の指揮官を委ねておるところよ」
「それは言い過ぎだ」
そこで2人が浮かべておったものが、笑顔という明確なものに変わる。
堰破壊の作戦のあと、2人は満足に話してはおらなかった。オグルは工作隊を早くに南城に無事に送り届けねばならぬとして、本丸に立ち寄ることもなかった。きまじめすぎるオグルらしいといえば、オグルらしい。
直接にその功を成し遂げたさまを聞き、それを
ただ、こたびもまたそれはお預けにせねばならぬようだ。ここでシャイフは、それを口に出す。
「策があるのだ」と。
その後、やはりクトルグ・カンの下に赴いた2人は、その策を許され、また援軍を約束された。
アルプ・エル・カンという者が率いる1隊とのこと。意外なことに、マムルークの部隊という。
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