第25話 モンゴル軍の動き9
人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
ジョチ:チンギスと正妻ボルテの間の長子。
クナン:ジョチ家筆頭の家臣。ゲニゲス氏族。万人隊長。
チャアダイ:同上の第2子
オゴデイ:同上の第3子
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。万人隊長。
ブカ:北城内に拠点を築いたトルン・チェルビの配下。百人隊長。
人物紹介終わり
城内に水があふれていますとのブカの報告を受け、ボオルチュは急ぎ西門より北城内に入った。
まさにその通りであった。
それを確認するや、王子たちの各々の陣に自ら赴くことにした。その状況を伝え、日程の延期と軍略の練り直しがどうしても必要であることを説き、軍議の再招集の許可を得るためであった。
チャアダイからは
「水などで我が軍の攻撃を止められるとそなたは申すのか。攻め込めば、恐れの余りすぐに降伏しよう。我の部隊は計画通り二日後には侵攻を試みるぞ。軍略の練り直しも軍議の再招集も無用である。どうしてもやりたければ、ジョチとすれば良い」
と取り付く島もなかった。
オゴデイは、兄上が望むなら軍議の再招集にも応じるが、との兄任せの姿勢を最後まで崩さなかった。
そしてジョチはジョチでクナンを応対に出して、ようやく和平を進める気になったのですかと問い返すのみで話はそこから全く進まなかった。
ボオルチュは憤りに包まれながら戻った。
そもそも城内に留まらず、モンゴル軍のほとんどが布陣する城外にも水は及んでおった。
泥水は運河や濠からあふれ出しており、それらの周辺を水没させておった。更に低い地に流れ込んでは、ところどころに浅いとはいえ泥川や泥池の如くを生じておった。
(これを見て、なお気付かぬか。なお想い至らぬのか)
迂回するのが面倒で泥水の中を進むと、どうしてもところどころで馬は足を取られ、ボオルチュを更にいらつかせた。
その姿ははっきりせぬが、馬の足に驚いてであろう、泥水の下を何かが逃げ惑うことも度々であった。
ボオルチュとしては自部隊の準備を進めざるを得なかった。その言葉通りボオルチュ部隊の布陣を待つことなく、チャアダイは南城攻略を始めるであろう。そうなれば、モンゴル軍の犠牲は否応なく大きくなろうし、何より作戦の成功は一層おぼつかなくなろう。そして好ましくない状況であるは確かだが、まだ失敗すると決まった訳ではなかったゆえに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます