第24話 イェスンゲ 

  人物紹介

 モンゴル側

イェスンゲ ウルゲンチ攻めでは、城外での遊軍の指揮官を委ねられる。オトラルのカンクリ勢からは、黒トクと呼ばれる。

  人物紹介終了


 トガンの隊を追ったのは、イェスンゲ自身ではなかったが、その配下の1隊ではあった。ゆえに、それをとりしきる本人も、その近くにはおった。


 そのこのところの想いはといえば。

 あやつらは、いくさけがしておる。年長のいとこたち、ジョチとチャアダイのことである。あやつらは、勝つのをそっちのけで跡継ぎ争いをしているのだ。自兵が命を賭けて戦をしておるのに・・・・・・と。


 イェスンゲの正直なところであった。ただ、さすがに野放図なところのあるイェスンゲといえど、このことは口外できぬ。


 そして、その想いは己の亡父ジョチ・カサルがカンに疑われたことと結びつく。父が玉座を狙っていると想い込み、カンはその軍勢をいだ。命まで取らなかったのは、ホエルンおばあ様が許さなかったからだとも、カンに最後の慈悲の心が残っておったゆえとも聞く。


 それもあって、いとこたちのなしておることへの想いは辛辣とならざるを得ない。


 しかも、今の己はその尻ぬぐいをしているに等しい。何せ、兄弟ゲンカのせいで、ジョチは捕らえる気さえ無い。ジョチの隊が追って来て、己のところで待ち構えるならばまだしも、好き放題逃げて来られては、いかんともしがたい。


 加えて、逃げるばかりのカンクリ勢もまた面白くなく、やはり戦を汚しておると想え、その追跡にどうにも身の入らぬイェスンゲであった。

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