第8話 モンゴル軍の動き2
人物紹介
モンゴル側
ジョチ:チンギスと正妻ボルテの間の長子。
クナン:ジョチ家筆頭の家臣。ゲニゲス氏族。
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。
人物紹介終わり
ボオルチュはジョチに呼ばれた。
『重大事の相談があるゆえ、至急、我が
ボオルチュは一人のみ連れ、ジョチの陣に向かう。心中、一つの憂慮を抱えながら。側近の同席を許さぬとは、ジョチは我をおどす積もりではあるまいか。
出迎えたジョチの配下に案内され、ボオルチュは小さな
ジョチとクナンは立ったまま出迎えに待っており、ボオルチュは一端挨拶のためにひざまずかんとするが、ジョチに脇を抱えられ軽く抱擁されたため、それさえ許されなかった。
ジョチは主人の席たる南面ではなく、東面して座し、ボオルチュには西面する座を勧めて来た。対等を意識させるその割り振りはボオルチュのチンギスへの近さに対するジョチなりの心配りかもしれぬが、会談の用向きを聞いておらぬボオルチュにすれば、素直にそれを喜ぶことはできぬ。クナンは北面の席に座した。
三人の間には、金糸にて虎が鹿を襲っておる様の
「ボオルチュ・ノヤンに是非食べさせたいとして、ジョチ大ノヤンが配下に命じられ、捕らえさせたものです。朝から近くの野に赴かせ、ようやく先ほど届きました」とクナン。
ジョチは革袋を取るや、「これもまたこの地で取れた酒です」と言ってボオルチュに渡さんとする。
「まずはジョチ大ノヤンからお飲み下さい」
「いや、そなたの方が年上ですから」とジョチが再度勧めると、
「
「ここは客人たるそなたが口をつけねば始まりませぬ。わたくしもオゴデイ大ノヤンに負けぬ酒好きですから、飲みたいのは山々。わたくしを年上と気づかうお心があれば、まずは一口お飲みになり、この老体にも美酒にて喉をうるおさせて下さい」とクナンが返す。
「そうですか。わたくしが先に飲まねば始まらぬとなれば」
ボオルチュは革袋の飲み口に口を付け、喉をうるおす。口元からあふれた酒があごに垂れ、服を汚すのも構わずに。
「おお。良き飲みっぷり」
とジョチは上機嫌に言い、ボオルチュが渡して来た革袋を己は口を付けず、そのままクナンに渡す。
「お先に良いので」と問うクナンに対し、
ジョチは「構わぬ。飲みたいのであろう」と返す。
「それではお言葉に甘えて」とこちらも豪快に飲む。
色色と口うるさいであろうクナンを
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