第7話 モンゴル軍の動き1
人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
ジョチ:チンギスと正妻ボルテの間の長子。
チャアダイ:同上の第2子
オゴデイ:同上の第3子
イェスンゲ:次弟カサルの子供 (チンギスにとってはオイ)。
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。
人物紹介終わり
そしてジョチの不満が的中することとなった。敵は降伏を拒んで来たのだ。ゆえにモンゴル側は攻撃の準備に取りかかり、投石機を組立て始めた。ただしこのウルゲンチの周辺には手頃な石がなく、ゆえにその代わりとすべく桑の木を切り倒し、その幹を弾へと加工する必要があった。
全ては寒気の中での作業であった。幹弾の重さを増すために水に浸すのだが、翌朝には入れておった桶の上に氷が張っておること度々であり、それを命じられた人々――近郊の住民及びブハーラーやサマルカンドから連行されて来た捕虜――は、手指のしもやけやあかぎれに苦しめられつつ、殺されるのではという恐怖の中でそれを行った。
どう攻めるかについての軍議にては、珍しくジョチとチャアダイの意見が一致した。本丸があるとの情報が得られた北城を重点的に攻略すべきであると。オゴデイにもボオルチュ以下の諸将にも反対する理由はなかった。
次に誰が北城を攻めるかが論じられた。オゴデイがあっさりと「我が南城の方を攻めますので、三人で北城を攻めて下さい。」と譲ったので、もめることもなかった。
そもそも各部隊は無用の混乱を避けるため、その進軍して来たままに宿営しておった。北東方面から進軍して来たジョチが北門を攻め、南東方面から進軍して来た残りの三部隊はチャアダイが東門、ボオルチュが進軍路から一番遠い西門に回り攻めることが決められた。
イェスンゲはオトラル戦同様、本人の望みもあり、遊撃隊を託された。
投石機を組立て幹弾の準備を終えたモンゴル軍は、ウルゲンチを囲むように布陣すると、城門への攻撃を開始した。ただ部隊間の連携が悪く、各部隊が個別に門の攻略を試みるばかりであった。特にジョチとチャアダイの間で連携が全く取れず、その攻めは中中難渋した。
それでもチャアダイが力攻めにて東門を落とした。そこから侵攻してモンゴル側は多大な犠牲を払いつつも、北城内に拠点を確保するに至った。攻撃を開始して二十日近くかかってようやくであった。
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