第6話 謀略――モンゴル崩し――その始まり

 ウルゲンチ北城、その本丸内にある軍議の場。


 雁首がんくびをそろえるは、カンクリ勢のおもだった武将。


 その議論を主導するは、先に新スルターンを僭称せんしょうしたとの罪でジャラール王子謀殺を計画したクトルグ・カン。あの事件以降、ウルゲンチ城内にて、この者の影響力は更に増しておったのである。


 ただ、他のカンクリ勢が一枚岩にまとまったとは言い難い。特に皇太子たるウーズラーグ・シャーが去ったことは、ひび割れの原因になりかねなかった。


 それでもなお、バラバラになる訳には行かぬ理由もあった。いまだ距離を保っておるとはいえ、城を囲むモンゴル軍の存在であった。望むと望まざるとにかかわらず、ここにおる者は一致団結、協力せねばならぬ状況に追い込まれておった。


 そして、この中の多くが、それを聞くにしたがい、クトルグ・カンの導く先に一つの光明が見出せるやもしれぬと期待したのも確かであった。



 その議論にて。

 内通者によりモンゴル軍側の軍議の内情がもたらされたこと。更にはそれを裏付ける如く、降伏を求める使者が来たこと。ゆえに、それは誤りなきものと想われると。即ち、今、この時に限っては、モンゴル軍の内懐うちぶところは我らの手のうちにあると。


 そしてクトルグ・カンはそれを利しての謀略を伝え、ここに集う者たちは、それを了承した。それに運命を託すことにしたのである。


 クトルグ・カンの低い声が軍議をしめくくった。


「奴ら、地獄に落ちるべき者。その死後に神が罰を下されることは明らかではあれ」

 ここにてたっぷりと間を置くと、

「まずはここにて我らカンクリがそれに劣らぬものを味合わせてやろうぞ」

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