第5話 オトラル戦2
人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
ジョチ:チンギスと正妻ボルテの間の長子。
チャアダイ:同上の第2子
オゴデイ:同上の第3子
トゥルイ:同上の第4子。
イェスンゲ:次弟カサルの子供 (チンギスにとってはオイ)。
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。
シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。
ジェベ:チンギスの臣。四狗の一人。ベスト氏族。
スベエテイ・バアトル:チンギスの臣。四狗の一人。ウリャンカイ氏族。
トクチャル:
ダイル:オゴデイ家の臣。コンゴタン氏族(第一部の第30話 『問責の使者3』のスイケトゥと同族)
ホラズム側
スルターン:ホラズム帝国の君主。
人物紹介終了
チンギスの下には既にスベエテイから、以下の報告が入っておった。
「オトラルを遠望できるところに陣を布き、三千人隊と共に己は留まり、ジェベ隊の到着を待つと。そして残り七千人隊を細かく分けて、周辺の町や村を調査しておりますと。
また千人隊長のダイルを発し、オトラルに宣戦布告したと。その際、カンの命に
そしてその二日後には、ジェベ隊到着の報をたずさえた伝令をスベエテイが送って来た。チンギスはトゥルイ、ボオルチュ、シギ・クトクと共に報告を受けた。
「引き続き、オトラル周辺の町や村を調査中です。少なくとも調査を終えた範囲では、人はほとんどおらず、食糧や家畜も残されておりませぬ。また麦わらも見当たりませぬ。ゆえに
「オトラル以外にも城壁に囲まれた町があると聞くが、やはり兵はおらぬのか」
とトゥルイが尋ねる。
「はい。兵ばかりか、戦えそうな大人の男さえ見当たりませぬ。女子供もおらず、留まっておるのは老人ばかり。それに病気の者や歩くのが難しい者たち。いずれの町や村も放棄されたことは明らかです」
「我が軍のサイラーム進駐の情報がオトラルに伝わり、人々が群れをなして逃亡しておるとの報告は、既に
とシギ・クトク。
「先の糧食や麦わらの件を考え合わせれば、兵は逃げたというより、オトラルに集結したと見た方が良いでしょう」
とボオルチュ。
「敵は準備を万全にして、我らを迎え撃とうとしておるのは間違いあるまい。報告。御苦労。しばし休まれい」
とチンギスは伝令に退出の許可を出し、その後四人で今もたらされた情報から、作戦の変更が必要か否かを検討した。
そして翌日チンギスは右翼のジョチ、イェスンゲ隊にはアリス川の右岸側を、左翼のチャアダイ、オゴデイ隊には左岸側を進軍させた。
更にその二日後、大中軍を
運河や川は凍っており、モンゴル軍の進軍を遅らせるものはなかった。街道沿いの畑にも果樹園にも、人は全く見当たらなかった。ただやがて将兵の注意は前方にのみ向けられることになった。
そこには確かにオトラルの偉容があった。高台が小山の如くに盛り上がる。最も外側に外城の城壁。その内に、より高き内城の城壁がある。その二重の城壁の内側には、他の高き建築物を従える如くに、本丸とおぼしきものがそびえておった。そして、それは天空へと至らんとする如きいく本もの小塔をも、また備えておった。
とはいえモンゴルの将兵が、これを旅行者の如くの感嘆の想いで眺めた訳ではなかった。彼らの顔には一様に厳しさが宿っておった。これがまだ敵の騎馬の大軍であれば、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます