ティールとフィーノ

フィーノの家に帰宅した俺。

「あっ、おかえりー!それと、その子は?」

「ああ、ええと……なんて言ったらいい?」

「普通にティールって言って」

「あの、この子はティール。あまり深く考えないでくれ。説明が難しいから」

ティールの職業とか全然わからないからな。

だから紹介は名前だけにした。

「ティール……よろしくね」

「う、うん、よろしく……」

ちょっとぎこちないように見えるけど、二人は挨拶を交わした。

挨拶を交わすと、そそくさとフィーノはどこかに行ってしまう。

「あ、そういえば、どうしてついてきたの?」

「えっ?」

どうしてティールが俺の後をついてきたのかが分からない。

「それは、えーと……」

なにか言いたいことがあるようだが、なぜかティールはもじもじとして言わない。

「……まあいっか。とりあえず、好きなことしててよ」

俺はそうティールに促すと、一瞬驚いたような顔をしたように見えたが、ティールは家の中をキョロキョロしながらソファに座った。

「それで、肉についてなにか進展はあったの?」

と、どこからかティールの声が聞こえた。

「ああ、うん。一応、肉を柔らかくするとかなんとかっていうものは見つけたけど……いや見つけたんじゃないな」

「そう、それはよかったね!」

おいおい、声だけじゃなくて姿も見せてくれよ。

「なあ、お前はどこにいるんだよ?」

「探しても見つからないよー!」

ほんとに何してるんだろうか。

「はぁ……」

ため息と同時に、ティールのそばに腰を下ろす。

「ティール、もう一回聞いていいか?」

「どうしてついてきたか、だっけ?」

ティールはそう言うと、少しの間考えるようなそぶりをした。

「単純だよ。少しの間、君のところにいたいと思ってね」

「……え?」

「……困惑するとは思わなかったよ。ただ、こっちの世界の方が楽しいなーって思っただけだよ。君のところにいると、なんだか安心するんだー」

そういいながら笑顔を見せるティール。

その笑顔がかわいかったので、思わずドキッとしてしまう。

「そ、そうか……話は変わるけど、ティールはどういう職業?」

ティールから視線をそらし、ティールが就いている職業の話に変えた。

「前にも一度言ったはずだよ?」

そういえば、この世界に来る前に、三途の川的なところにこの子がいたよな。

それで門番的なことをしているとかなんとかって……。

「門番的なことをしているって言ってたけど……」

「まあ、大体あってる」

というか、異世界に導く人がここにいていいのかと思う。

「基本的には、死んだ人を異世界に飛ばせるかを決めてるよ。ほかには、こうしてこっちの世界を観光したりしてるよ」

それはただの観光、というか遊びでは?

まあ、どうだっていいんだけど。







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肉食文化がない異世界 かろん @olt36

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