ティールから好かれる俺

この世界で初めて肉を食べる。

食べるといっても今すぐに食べるわけではなく、さっきティールに「肉を柔らかくできる食材」を頼んだが、はたしてその食材はなんなのか。

しくったな。もう少し細かく伝えるべきだったか?

「さてと……じゃあ、肉を柔らかくする食材だよね。はいどうぞ」

「あ、ど、どうも……?」

ティールから渡されたのは、玉ねぎだった。

いやいや、これはどういうことだ……?玉ねぎ?

玉ねぎって、肉を柔らかくする効果とかあるっけ……。

「えーと……これはどういうことだ?」

ティールに聞いてみる。

「肉を柔らかくする食材なら玉ねぎらしいよ。まあ、ボクはやったことないけどねー」

この子って料理できないのか?

いやそもそも、ご飯を食べなくても生きれるのかもしれない。なぜならここは異世界だ。

……そういうことじゃなくてだな。

「玉ねぎか……うーん。まあいいや」

貴重な願い事を一つ使い、残りはあと1つになってしまった。

貴重な願い事は、こんな「肉を柔らかくする食材」のために使われた。


さてどうしたものか。

「にゃー」

「お前は猫か」

ティールはなぜか、元いた場所に帰ろうとせず、なぜか俺について来るのだった。

そして、俺がいるのはちょっとした公園らしきところ。

いやまあ、噴水はあるから公園だと思うけど。

「うーん……」

さっきの玉ねぎについて、これをどうやって使えばいいかわからない。

というか、これでほんとに肉が柔らかくなるのだろうか。

「なにまた悩み事?」

ティールと並んでベンチに座っているのだが、ティールはなぜか俺にめちゃくちゃくっついてくる。

「いや、そういうことじゃないんだけどさ……」

ちょっと苦笑いをしつつ、ティールから距離を取る。

「じゃあ何ー?」

と、また俺にくっついてくる。

それと、さっきもそうだがこのムニムニ感って……はっ!まさか。

とそこで、ティールの体に視線を移すと、

「んー?どこ見てるのかなー?」

「い、いや、何でもないっす!」

このムニムニ感は膨らみかけだった。

まあ、見た目がそうだからそうなんだろう。

「ははっ!別に正直に言っていいんだよ?怒ったりしないからー」

あははっとケラケラ笑いながらそういうティール。

「いやいや、ほんとになんでもないから!」

そういいながらベンチから立ち上がる俺。

そこに、柔らかな感触が俺の腕に伝わった。

「へっ?」

顔を少し下に下げたまま、なぜか俺の腕をつかむティール。

「も、もう少しくっついていたいんだけど……ダメ?」

そういいながら上目遣いをするティール。

少女の上目遣いとか反則だから!

「……」

俺の腕には、ひんやりと柔らかいティールの小さい手。

そしてティールの上目遣い。

……こんなん勝てるわけがなかった。

「……わかったよ。少しだけだからな?」

「へへっ……ありがと隼人」


青い服は、好かれているとかなんとかって誰かが言ってたよな。








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