2つ目のお願い事
ティールにウサギみたいなぬいぐるみを渡した。
ぬいぐるみを渡すと、ティールはそのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「そんなに欲しかったのか?それ」
と俺が聞くと、
「うんっ!」
と、ぬいぐるみを強く抱きしめうなずくティール。
まあ女の子だからそりゃあそうか。
「ふぅ……それで、隼人は何を悩んでいたの?」
ぬいぐるみをもらった興奮はもう無くなったようだ。
「ああ……この世界は肉を食べる文化がない。というより、肉というものはあるけど硬くて食べれない。だから、なんとかして柔らかくできないかなと思って」
「柔らかくかぁ……隼人はもう知ってると思うけど、この世界には肉を柔らかくするようなものはないよ」
ほんとこの世界は不便だ。
必要なものがなかったり、逆に要らないものだってある。
いや、どの世界もそれは同じことか。
「だよなぁ……うーん」
ここで俺は、あごに手をやり考えるように唸る。
ここで願い事を言うべきなのか?と。
いやでも、それはもったいないし……。
願い事は3つしか言えない。
「ああそういえば、君がこの世界に来たいって言ったでしょ?あれは、願い事の1つに入るから」
なっ、なんだと?!
もうすでに俺は、貴重な願い事を一つ失っていたっていうのか!?
……仕方ない。それは仕方のないことだ。
ここで願い事を言ってしまえば、願い事が残り1つになってしまう。
――しばらく考えた挙句、
「じゃあ、肉を柔らかくできるような食材をください」
分かっている。
たかが肉を柔らかくしたいがために、貴重だった願い事を一つ消費するのはあまりにもったいないことは分かっている。
それを言うならもっと別な願い事があるだろうにと。でも、いいんだ。
最後の願いごとはもう決まっている。
だけど、それはまたいつの日か。
「肉を柔らかくする食材……そんな願い事でいいの?」
少し困惑したような顔で聞くティール。
「ああ。いいんだ」
「えっ、で、でも。この願い事は、使っちゃったらもう一回使えないんだよ?例えば王様になりたいとかさ――」
やはりティールも、こんな願い事には納得がいかないようだ。
「いいんだって。あともう一つ残ってるんだろ?」
「うっ……そ、それは残ってるけどさ」
そんな願い事に、こんな貴重なものを使わせたくないらしい。
うーん、どうしたものか。
もしかしたら、別な場所には肉を柔らかくするような食材があるかもしれない。
でもティールは、この世界には肉を柔らかくするようなものはないと言っていた。
だけど、もしかしたらティールが知らないだけであって別なところにあるかもしれない。
もしそうだとしたら、こんな貴重なものを使ってられない。
「なあ、もう一度聞くけど、ほんとにこの世界には肉を柔らかくするような食材はないんだな?」
「うん。ないよ」
即答だった。
「それなら、この願い事を叶えてくれ。頼むよティール」
俺は思わず、ティールの小さい手を握ってしまった。
「あっ……隼人がそういうなら」
俺がティールの手を握ったことに少しびっくりしたようだが、ティールはしぶしぶではあるが俺の願いを叶えてくれるようだ。
「はぁ……まったく。君は本当のバカだね」
ティールは俺の方をチラッと見て独り言のように呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます