お久しぶりです!ティールさん!

――どうやら肉が硬いのは調理技術の問題ではないようだ。

実際に、ここの調理場に行き、どういう風にこの肉を調理しているのかを見てみたが、肉を硬くするような調理はしていなかった。

やはり、その動物自体がゴリゴリに硬いのだろう。

他の動物の肉も、このステーキと同様に硬くてダメらしい。

この世界にいる動物は、ほぼすべてが硬いといっていいだろう。

だが、どうにかして柔らかくできないだろうか。

「うーん……全然売ってないんだな」

食堂の営業時間が終わり、俺は帰りにちょっとした出店によることにした。

フィーノには、先に帰ってていいよとだけ伝えてあるので、この場にフィーノはいない。

今気が付いたのだが、この世界で争いを見たことがない。

例えば爆発音とか、モンスターを駆る人たちなど……この辺りにはいないだけであって、もう少し遠くに行けばいるのかもしれない。

だとしても、俺はモンスターなんて駆れるほど強くはないし、もとはと言えばただの一般人だ。

この世界のことは詳しくないし。

話がそれたが、ここの出店には色々なものが売っている。

ゲームセンターのように、ぬいぐるみが売っていたり、この世界の果物やお菓子など……これ買っていったらフィーノが喜びそうだな。

そう思った俺は、そこにあったピンクのぬいぐるみを取った。

「値段は……これくらいか」

一応食堂の方で働いたので、少しだけど給料をもらっていた。

そのお金を使いぬいぐるみを買った。

本題はここからで、どうやって肉を柔らかくするかということ。

色々見て回ったのだが、例えば植物の種なんかはここには売っていない。

じゃあほかに肉を柔らかくする方法はないだろうか?


「――ねぇねぇ、どうしてそんなに悩んでるの?」


聞き覚えのある声が後ろの方から聞こえた。

まさかと思い、振り返るとそこには、青っぽい服を着た少女が立っていた。

「まっ、まさか君は……!?」

「えへへー、驚いた?ボクは、こっちの世界にも来れるんだよ?」

その少女は俺に近づいてきて、顔がはっきりわかるようになるとその子はティールだということが分かった。

青の服――それは、その人に好意を持っているということ。

「それで?何を悩んでいるのかな?」

「ああ、その……この世界の肉は硬いっていうから、どうにかして柔らかくできる食材とかないかなって」

「ふーんそういうこと。あいにくだけど、この世界にはそんな食材はない。個々の人たちは、ほとんど肉を食べないで生活してるし」

肉を食べないなら柔らかくする必要はない……ということか。

「おっ?そのぬいぐるみ誰にあげるの?」

と、俺が右手に持っていたぬいぐるみにティールは魅かれたようだ。

「残念だけど、これはティールのじゃないよ」

「な、なんだってぇ!?」

「……ほしいの?」

逆に俺が聞くと、ティールは恥ずかしそうにうなずいた。

「うーん……まあ大丈夫か」

幸いもう一つだけぬいぐるみを買えるお金はあるので、ティールにぬいぐるみを買うことにした。

「じゃあ、これがいい!」

無邪気な子供のようにティールが選んだぬいぐるみは、どことなくウサギのような見た目をしているものだった。

「ウサギ……?いや違うな」

そもそもこの世界にウサギなどいない。

じゃあどうしてウサギのような見た目をしているのだろう。

「じゃあ買ってくるよ」

「うん!いってらっしゃい!」

どうしてこれがウサギに見えるのかは、今は考えないでおこう。





















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