杠葉高校文芸部に所属する1年生、志島皐月は書き出せない部誌の原稿を前に唸っていた。そこへ現れた部長との雑談の中、皐月はふと思い出す。先週の土曜日に見た、「ちょっと不思議なもの」のことを。
こうして皐月さんの記憶を辿っていくわけですが、辿りかたがそのままインタビュー番組の手法をなぞっているのがおもしろポイントです。
部長さんというインタビュアーの補足や要約、促しを受けた皐月さんの行動や心情が丁寧に語られて、現場検証で謎が少しずつ解かれていく。小説でありながらドキュメントであるという構成は物語を深掘りし、さらにはごく自然に、皐月さんという語り部の人となりや部長さんとの関係性も浮き彫りにしてみせるのですね。
そうして掘られて彫られて、ついには正体の知れない不思議の正体へ迫ることに。そう、ある一点から、ドキュメントがミステリードラマへ転じるのです! このどんでん返し、すばらしいのひと言ですよ。
ささやかなお話を最高の切れ味で魅せてくれる日常の謎、推すしかありません!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)