lemonさんはテレビを見つつ考える
ある日、れむのが住む家では、妖怪の特集番組が流れていた。
その番組で、オーブが映り込んだ写真を見たキャスターや芸人、俳優たちがこう言った。
「これって埃だよ?化学的に証明されてるやん。」
そして親が言うに、妖怪は想像でできた存在だと言うのだ。
「今の人がいろんなアニメや漫画でたくさんの悪役を考えるように、昔の人もいろんなことを想像してたんだなぁ。」
こういった発言を聞いたとき、れむのが持つ想像力は暴れ始める。
まずだ、まず最初に、大前提を崩すことになるかもしれないが………
何故、妖怪は人間が考え出した存在だと思っているんだ?そこからが理解できないのだ。
どこかの法螺吹きが思いついて広めただけであったら、ろくろ首や一つ目小僧が全国に広まるわけがないと思うのは自分だけなのだろうか。
現実的で『妖怪なんているわけねぇだろボケ』と思っている人はブラウザバックしていただいて構わないが、ここからは僕の考えを書こうと思う。
僕が思うに、妖怪たちは、人間たちの信じる心がなくなってきてしまったから、現れても面白くないと思い始めたのではないか、という説が濃厚だ。
まだ墨で絵を描くのが当たり前だった頃、妖怪たちは、ふと、自分の身に起こった不可解なことを信じることができる、どこかの誰かのもとに現れて『お前の腕を寄越せェッッ!』なんて言って驚かし、自分達の存在を周知させたかったのではないだろうか。
でも、今は、大人は何でも化学で解決しようとするし、たとえ現れたのが子供の前だったとしても、本人が心からその妖怪のことを信じて言いふらしたとしても、現実的な周りが、バカなやつとして扱うだけで広まらないと妖怪たちが知ってしまったから、現世に妖怪は現れなくなってしまったのではないか。
自分達がいると信じられていなければ、驚かしても楽しくないではないか。
でも忘れられるのは寂しい。
きっと人間が妖怪の立場だったらきっとそう思うはずだ。
いくら自分達が現れたとしても、人間たちには理解してもらえない。信じてもらえない。今の時代は、化学や生物学が発達し『子泣き爺は質量保存の法則の関係で実現不可能だ』『骨格のことから考えて、ろくろ首はあり得ない』なんて言われていることを、彼らが受け入れざるを得なくなっているのではないだろうか。なんて妖怪たちにとって生きづらい環境なのだろう。こんなことをされたら花子さんが傷ついてトイレから出ることができなくなってしまう。
だが、こんなことを言っていては何も始まらない。一万歩ほど譲って妖怪たちの生活の場を、人間たちの想像の中だと考えよう。
でも………そう考えると悲しくなってくる。この世界には、この頃妖怪は現れてくれない。実際に、僕は妖怪を見たことがないし、心霊現象を目撃したこともない。ということは、極端に考えると、この世界に生きる人たちの想像力は、昔に比べて乏しいものになってきている、そして、趣味であったとしてもこの作家という活動をしている自分にも想像力がないということになってしまう。
少し話は変わるが、僕の処女作である『御伽噺』には、
だから、この世界が御伽噺の中の世界だったとしたら、妖怪なんていないと考える今の大人たちは、
では、もっと妖怪たちが過ごしやすい人間界を作るにはどうしたらいいのだろうか?
僕は、昔の人に勝るほどの想像力を、現世に復活させればいいのではないかと思う。
今これを読んでいるあなたは、自分が小さかった頃を思い出してみてほしい。誰しもが一度は『お化けが出そうで怖いから、暗いところで寝るのは嫌だ』と思ったことがあるはずだ。
そんな小さい頃の想像力を、誰しもが持っていれば、妖怪たちとは共存できるのではないだろうか。もちろん、今に生きる夢のない大人たちを全員殺そうというわけではないし、この考えを押し付けるわけではない。だけど、せめて、厳しい現実に打ちのめされて夢を失ってしまった大人たちが、暗いところを怖がる子供たちから夢を奪うのは、この上なく勿体無いと思うのだ。だって妖怪たちが暮らしづらくなっちゃうじゃん。
そんなことを考えながら書いていたら、今僕の後ろにある和室に置いてあるちょっと怖い妹の人形が笑った気がしたので、このくらいにしておこう。
これ以上話すと僕が悍ましいものに気に入られて、周りが妖怪だらけになるかもしれない。
まぁ、そうなったらこの論文(?)をハーバード大学に提出することにしよう。
きっと彼らも生活してしやすくなるだろう。
lemonさんの想像力は日々暴れているようです Lemon @remno414
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